免許更新が厳しくなる?「一夜漬け」対策よりフェーズフリー発想からの「備えよ常に」の重要性

先日、私は助成金の説明会を兼ねたあるセミナーに参加してきました。 正直に告白すれば、私の主な目的は助成金に関する情報を得ることであり、同時に開催されたセミナー自体には、それほど大きな期待を寄せていませんでした。「自分の事業とはあまり関係のない、どこか遠い世界の話なのかな」――そんな軽い気持ちで受講したのです。
しかし、そんな「油断」が一瞬で吹き飛びました。 セミナーのテーマは、「フェーズフリー」。内容が進むにつれ、私はまるで金槌で頭をぶん殴られたような衝撃を覚え、その思想に猛烈に引き込まれていきました。期待値が低かった分、脳裏に電撃が走り、「これこそ、私たちが求めていた発想だ!」と、久しぶりに心の中で小躍りしたのはここだけの秘密です。
説明によれば「フェーズフリー」とは、一言で言えば「日常時」と「非常時」の壁をなくす発想、とのことです。災害などの「非常時」に必要なものはたくさんあります。しかし、いつ来るか分からない非常時のためだけに特別なグッズを買い、コストをかけ、普段から備え続けるというのは、人間の心理として非常に難しいものです。 それならば、「普段から日常的に使っているものが、そのまま非常時にも役立つ」ようにすればいい。
この日常と非常をフリー(地続き)にする、という発想を私が開発した「3Dカード(Driver’s Desire Discover Card)」にも取り入れることが、今後の進むべき道を照らすような決定的な光になるのではないか、と直感的に思ったのです。
「日常の頑張り=情状酌量」という仮説の否定
私はさっそく、このフェーズフリーの発想を「高齢ドライバーの安全運転対策」にどう落とし込むべきか、改めて「頭の体操」を始めてみました。そもそも3Dカードは、高齢ドライバーが「事故を起こす」という最悪の非常時を想定し、それを回避するために考えたものです。つまり、一種の「防災グッズ(非常時専用ツール)」と言えます。
しかし、ここにフェーズフリーのジレンマが立ちはだかります。「(事故という)非常時に備えて必要だということは分かるけれど、それだけなら買わない」――まさに、非常時のためにコストをかけてまで、グッズを買わない、というパターンに、見事にはまっていたのです。
それならば、日常でも使用してもらうために「日常の頑張りが、非常時にも直結して身を助ける」というシナリオが必要不可欠です。そこで私は最初、「日頃から安全運転のためにこれだけ頑張っている、という努力(事実)が、万が一の有事(事故)の際に『情状酌量(心理的・環境的な配慮)』として認められるのではないか」という仮説を立ててみました。昔から言う一種の「芸は身を助く」という発想なのかもしれません。
しかし、現実はそう甘くはありませんでした。東京都立中央図書館さまのご協力をいただき、過去の裁判の判例を徹底的に探してみたものの、「日頃の安全努力」が事故時の刑罰を軽くしたような事例は、確認できませんでした。残念ながら、私たちの仮説を裏付けるような証拠は得られなかったのです。
冷静に考えれば、当然と言えば当然かもしれません。事故が起きるのは一瞬です。どれだけ過去に努力していようとも、事故が起きてしまえばその一瞬の判断ミスだけが冷徹に問われる。法的な世界において、事前の行動(努力)により、情状酌量を期待するような「逃げ道」は存在しない、ということを改めて知りました。
「日常の努力が、事故時の裁判で身を助ける」というシナリオは完全に崩れ去りました。それならばと、次に「運転技能検査(実車試験)での不合格リスク」に備えるために日常から頑張る、という発想も検証しました。
しかし、現在の制度では、一定の違反歴等がない限り、通常の高齢者講習を受講するだけ(実車試験は免除)で、どれだけ心配な運転挙動が見つかっても、強制的に免許を剥奪するような法的拘束力がありません。これでは、「日常から必死に対策をしよう」という強い動機付けにはなり得ない。 一時は、完全に万事休すの壁にぶち当たったかのように思えました。
免許更新基準の「見直し」という新たな非常時
そんな折、日本の高齢ドライバーを取り巻く環境を根底から揺るがしそうな情報が飛び込んできました。警察庁が、高齢者の運転技能検査(実車試験)のあり方を抜本的に見直すための有識者検討会をスタートさせたという報道です。
【報道内容の要約】
警察庁は、一定の違反歴がある75歳以上のドライバーに義務付けている「運転技能検査(実車試験)」の見直しに向けた有識者検討会を開催した。 背景にあるのは以下の事実。現在の実車試験の合格者を追跡調査したところ、10万人当たりの事故件数が、通常の高齢者講習を受講した違反歴のない75歳以上の「約2.8倍」にのぼることが判明。つまり、今の試験をクリアして合格したはずの人たちが、実際には高確率で事故を起こしている。警察庁は「内容の充実(厳格化)を図る必要がある」として、道交法施工規則の改正を視野に議論を進めている。
この報道が意味するものは、現状の「実車試験」をクリアした人ですら、十分な事故防止になっていない、という衝撃的な事実です。これを手始めに、近い将来、違反歴のない高齢ドライバーにも「合格しなければ免許更新ができない実車試験(運転技能検査)」の対象が拡大され、免許更新の基準が厳しくなる可能性が高い、と考えています。これまでは違反等がなければ(実車試験はなく)高齢者講習だけでパスできていた現行の制度が、今後は「基準に達しなければ一発で免許更新不可(剥奪)」という仕組みに変わる可能性が極めて高い、と考えています。
行政として稼働をかける対応を取ることは大変なことですが、悲惨な事故を防ぐためには、この「基準を厳しくする行為」はもはや不可避とも言えます。
そうなると、私たち高齢ドライバーにとっての新たな「非常時」が定義されることになります。それは「事故の瞬間」だけでなく、ある日突然目の前に突きつけられる「厳格化された運転技能検査(実車試験)」という非常時です。
現在の高齢者講習は、違反等がなければ、その出来の良し悪しに係らず、免許の更新はできます。しかし、少しでも悪い印象を残したくない、と考える人も多く、高齢者講習の直前に「一夜漬け」で対策本で勉強してきた方も多いと思います。
しかし、年齢を重ねた脳と身体は、一朝一夕には言うことを聞いてはくれません。日頃から漠然と、何の実践的な対策もせず過ごしている人が、突然厳しくなった実車試験を一夜漬けのぶっつけ本番でクリアすることは不可能になる可能性が高いと思います。もし、一夜漬けで何とかなるような生ぬるい内容のままであれば、事故を防ぎたい、という警察庁が見直しをする意味そのものがなくなってしまうからです。
だからこそ、今、フェーズフリーの発想を取り入れ、今後厳格化される可能性がある「免許更新時の実車試験」という「非常時」を無事に乗り越えるためには、日常の生活や運転そのものを「鍛錬の場」として見直し、普段から何が必要かを考えて行動すること。これ以外に、大切な免許と移動の自由を守る方法はないのではないでしょうか。
「備えよ常に」3Dカードが引き起こす自発的な行動変容
世の中では、安全に関わる制度等に問題があれば、それを見直し、場合によっては基準を厳しくして事故を防ごうとする動きがあります。これに対して、大半の人が趣旨を理解し、賛同していると考えています。しかし、もしこれに「高齢者いじめだ」「改悪だ」と声を荒げて反対する人がいるとしたら、それは物事の一面しか見ていないのではないか、と思います。
もしこれらの動きがあった場合、その目的は決して「高齢者の免許返納を促進させよう」と言っているのではありません。免許証を持っている、という「既得権益」だけで、漫然と運転するのではなく、「普段から安全運転に必要な基準をクリアするための努力を重ねているなら、堂々と乗り続けていいよ」という、普段の努力が報われる「真っ当な世界」への変化なのだと感じます。
私がかつて身を置いたボーイスカウトの精神に、「備えよ常に」という有名なスカウトのモットーがあります。 直前になって慌てて急場しのぎの対策をするのではなく、日常の中で備えておく。イソップ寓話の『アリとキリギリス』にあるとおり、最後に笑うのは、日頃からの備えを実践してきた「アリ」の側です。
では、私たちは今後想定される制度の変更を見据えて、日常の中で一体何をすればいいのか?ただ「安全運転をしなさい」と漠然と言われても、人は行動できません。心理学の「ルビコンモデル」が証明する通り、人間がモヤモヤした状態を脱して実際に行動を起こす(ルビコン川を渡る)ためには、「納得できる具体的な目標の選択」が最もエネルギーを必要とする難所だからです。
だからこそ、私たちはその最初の動機として、「自分自身の運転の理想像、車を使って実現したい目的」を考える必要がある、と考えています。 もし、「今さら目標なんて見つけられない」と思うなら、ぜひ私たちの3Dカードを使ってみてください。カードをめくって取捨選択する、という単純な行為が、あなたの「運転をする内発的動機」を刺激し、自発的な行動への一歩を踏み出させてくれます。
もしかしたら、一度見出した理想像は、日常生活の様々な刺激の中で忘れてしまうことがあるかもしれません。そうなると、自発的な行動をする理由を見失ってしまい、継続的な取組が難しくなります。しかし、日常的にカードを使って考え続けること、3Dカードをキッカケに自分の運転と向き合うこと。それ自体が、安全に運転しようとする気持ちを喚起し、日頃のコツコツとした積み重ねこそが、将来突然やってくるかもしれない「厳格化された実車試験」という場面(非常時)においても、あなたが行きたい方向へと導く最大の武器になるのです。これこそが、私たちが考える「運転におけるフェーズフリー」という発想です。
世の中にある素晴らしいフェーズフリーの商品に目を向けるのと同じように、3Dカードを使った日常の安全運転への小さな備えが、あなたの未来を、そして大切な人の命を、確実に救うことになります。制度の変更如何に関わらず、今日から、未来の自分のために、理想の運転の考えてみませんか。
