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著書「伝え方が9割」に学ぶ ”敬老の日”の前に親の免許問題に悩む家族が取るべき手段を考える

またこの季節がやってきました。9月にシルバーウィークをもたらしてくれる「敬老の日」。シルバーウィークにどんな予定を組んで出かけるか。それも重要ですが、一年に一度はしっかり高齢者のみなさんを敬う日としたいものです。

身近な高齢者といえば自身の「親」を思い浮かべる方も多いでしょう。誕生日や母の日、父の日など、親に感謝を伝える機会は年間何度かあります。しかし、それらの日と「敬老の日」では、少し意味合いが異なるように感じます。誕生日や母の日、父の日は、家族としての存在や役割に対する感謝の色合いが強いものです。一方、敬老の日は、人生の先輩方を広く敬うという観点があります。身近な家族を敬うことはもちろん、周囲にいる高齢者への配慮や敬意も忘れないようにしたいものです。

そんな敬老の日に際して、「高齢」というキーワードに続く言葉を思い浮かべるとしたら、あなたは何を連想するでしょうか。この質問をしてみると、その人が普段どんな問題意識を持っているかがよく見えてきます。もしかしたら、「高齢」に続く言葉として「ドライバー」を選ぶ人も多いのではないでしょうか。もしそうであれば、何らかの形で高齢ドライバーを巡る問題に直面しているのかもしれません。

向き合うべき「免許返納」の現実と、放置するリスク

NEXCO東日本の調査によると、「免許返納について親と話したことはありますか?」という問いに対し、父親には「いいえ」が68.2%、母親には「いいえ」が62.0%という結果が出ています。この数値からは、母親以上に「父親にはこの話を切り出しにくい」。そんな家庭のリアルな実態が読み取れます。

同居していなければ親の日々の生活の様子はわかりません。そんな状態で突然「免許を返納したら?」と切り出しても、返り討ちに遭うのがオチです。下手をすれば「じゃあお前が代わりに送迎してくれるのか」と問いつめられ、自分は口だけの評論家になってしまう。それなら口に出さない方がお互いのためだ――そんな心理が働き、問題が先送りされがちなのかもしれません。

しかし、「予期後悔」という観点から見れば、どうでしょうか。問題を放置したまま万が一の事故が起きてから、「あのとき何かしていれば……」と後悔するくらいなら、その前に手を打つべきです。もちろん、少しでも手を打った上で、後悔することはあるかもしれません。しかし、「何もしなかった」という状況に比べれば、まだマシなはずです。

「避けて通れるなら避けて通りたい」、という心理は痛いほどよく分かります。しかし、幼き日に世話になった親に対して知らぬふりをするのは、ある種の「不義理」ともいえる行為ではないでしょうか。やはり、まずは問題を直視する姿勢が大切です。

『伝え方が9割』のステップで考えるこれまでの限界

では、実際にどうアプローチすべきか。ここでヒントになるのが、佐々木圭一氏のベストセラー書籍『伝え方が9割』です。

同書では、「ノー」を「イエス」に変える技術として、以下の3つのステップが紹介されています。

  • ステップ1:自分の頭の中をそのままコトバにしない
  • ステップ2:相手の頭の中を想像する
  • ステップ3:相手のメリットと一致するお願いをつくる

親に対して「心配だから免許返納したら?」と声をかける行為は、家族の頭の中にある言葉をそのままストレートに伝えているにすぎません。これではステップ1をクリアしておらず、断られて当然なのです。

さらに大きな壁となるのが、ステップ2の「相手の頭の中を想像する」というプロセスです。あなたは、親がなぜそこまで車の運転にこだわるのか、その理由をちゃんと聞いたことがあるでしょうか。尋ねられた親が、その理由をわかりやすく説明できたことがあるでしょうか。ここに大きな問題の根本原因があります。親が車を運転している姿を見ることはできても、親の「頭の中」を覗いたことがある人はほとんどいません。移動手段としての運転について、多くの高齢ドライバーに「どんな運転を心がけていますか?」と聞くと、決まって「安全運転だよ」という答えが返ってきます。しかし、「具体的にどのような安全運転ですか?」と問うと、明確に答えられる人は多くありません。

つまり、家族が親の頭の中を把握できていないのは、家族と言えども別人である以上ある程度仕方のないことです。そして、当の本人も自分の頭の中が整理されておらず、言語化できていないのが現実なのです。これではステップ2を実行しようにもできず、「イエス」を勝ち取れるはずもありません。

だからといって、ここで諦めてしまうのは、冒頭の「問題を避けて通る」ことと同じです。私たちは前に進まなければなりません。

「頭の中」を可視化する「3Dカード」というアプローチ

相手の頭の中を想像できないのであれば、「頭の中を覗くツール」を用意すればいい。そう考えて私たちが開発したのが「3Dカード」です。

このカードを使えば、自分の親が運転でどんなことを大切にしているのか、その本音が明確になります。親自身がこのカードを使って心の声を導き出し、それを家族に説明するという方法もできます。もし可能であれば「家族で一緒に取り組んでみる」というのも非常に有効です。

これまで多くの方にこのカードをご利用いただき、「運転を続けたい本当の目的が初めて発見できた」という多くの声をいただいています。親子で一緒に暮らしていても、お互いの気持ちのすれ違いは起きるものです。「どんな運転をしたいか」という本音を当の本人すら言語化できていなかった。だからこそ、どれほど伝え方の達人であっても、これまでは解決が難しかったのです。

親の頭の中が想像でき、その本当の目標や願いが分かりましたら、次はいよいよステップ3:相手のメリットと一致するお願いをつくるへと進みます。

親には「車に乗り続けたい」という強い思いがあり、そこには必ず「こうありたい」という理想の運転像もあるはずです。家族が目指すべきは、その親側の思いを軸に、やっぱり心配な事故を防ぎたい。その家族側の安心とを一致させることが重要です。最初から「免許返納」をゴールに据えると、意見は平行線をたどるしかありません。軸を「親が安全に運転を続けること、そして事故を起こさないこと」に切り替えます。その上で、「安全に運転するために、どんな対策を打つべきか」という方向に矛先を向けます。

このとき、家族が見つけてきた安全対策を一方的に押し付けるのは、新たな揉め事の火種になるだけです。しかし、3Dカードを通じて見出した「親の運転の理想像」をベースに、具体的な対策を「親と家族が一緒に考える」のであれば話は別です。それは他人から押し付けられたものではなく、自分たちが選んだ道だからです。そのため、家族全員の納得感が高く、実行の実現性も飛躍的に高まります。

新たなコミュニケーションの機会として

導き出した対策を計画としてまとめ、その進捗を家族全員で確認し合う。しかし、離れて暮らしている家族であれば、その確認が難しい。また、特に用事がなければ普段連絡をする機会も少ない。そんな状況かもしれません。

しかし、「家族内で決めた安全運転の計画をしっかり親が守れているか」という確認を大義名分に、定期的な連絡を取り合うことは、お互いにとって新たなコミュニケーションの機会となります。遠く離れていてもお互いを気遣い合える。そんな理想的な家族関係を取り戻すきっかけにもなるはずです。

以前、私はブログの中で「免許返納を巡る家族の議論が、イソップ童話の『北風と太陽』の北風になっていませんか」と書きました。強引に北風のように服を脱がせよう(免許を返納させよう)としても、物事はうまくいきません。必要なのは「太陽」の温かいアプローチです。言葉の伝え方が下手で拒絶されるのではなく、相手(親)の懐に飛び込み、相手(親)の内側から「イエス」を引き出すこと。その具体的な手段が、今回の考え方と3Dカードです。

まもなくやってくる敬老の日。 「今年のプレゼントは何にしようか」と決めかねているのであれば、今年のプレゼントは、この問題に家族で正面から向き合い、親や家族の「イエス」を引き出すための「きっかけ作り」にしてみませんか?