
【このブログの概要】
高齢ドライバーや家族からの「免許を返納すべきか」という相談。これに対し、免許返納する、しないの二者択一(0か1か)で延々と議論をする。しかも、その議論が一般論で終わってしまい、結論が出ないケースは少なくありません。 本ブログでは、地域包括支援センターや警察などの相談窓口に向けて、抽象的な議論を抜け出す必要性を説きます。そして、高齢ドライバーの「理想像」を言語化するツール(3Dカード)を活用して、双方が納得できる「第3の選択肢」を導き出す。その具体的な思考法を提案します。
高齢ドライバーが免許返納を巡り、家族と対立するケースはよくあります。多くの場合、「免許を返すか返さないか」という二択で行き詰まり、議論が進展しない。そんな状況に陥ることが多い印象を受けます。
そうした中、困り果てた高齢ドライバーやその家族が、警察や自治体の相談窓口。そして地域の「地域包括支援センター」などに相談に訪れるケースが増えています。
実際、現場の知人に話を聞くと、「警察に相談した後に、改めて包括支援センターに来た」というケースも珍しくないようです。警察は道路交通や安全運転のプロではありますが、相談者側からすると「とにかく免許返納へ誘導されるのでは」という警戒感や壁を感じてしまうのかもしれません。その点、日頃から身近で信頼関係があり、比較的中立な立場である包括支援センターの方が、本音を話しやすい。そのような背景があるのかもしれません。
しかし、その包括支援センターにも課題はあります。保健師さんや作業療法士さん、ケアマネジャーさんなど、福祉や健康のプロは揃っています。しかし、「高齢者の運転」という特殊な分野において、専門的なノウハウや具体的なツールを最初から持っているか。必ずしもそうではない、というのが実態だと思います。
その結果、「運転継続か、免許返納か」という二択のまま一般論で話を整理しようとしても、双方の顔色や反応を窺うばかりで、結局何も結論が出ない……という事態に陥りがちではないでしょうか。
なぜそうなってしまうのか。それは、高齢ドライバーも家族も、そして相談を受けるスタッフも、全員が「抽象論」で会話をしてしまっているからです。
高齢ドライバー側は、「車がないと生活できない」と自分の思いを繰り返し主張するばかり。家族も毎回同じ説明を聞かされ、どこから切り込んで説得すればいいのか分かりません。相談を受けたスタッフも、その場の雰囲気を丸く収めようと一般論で対応せざるを得ません。結果として相談者は「何らかの解決を期待して来た。でも、無駄な時間を過ごしただけだった」と苦い経験をさせることになってしまいます。
その原因の一つ。それはこの問題を単純な0か1かの二択で解決しようとすることにある、と考えています。このような不毛な時間を無くし、相談を真の解決に導くために必要なのは、「免許返納か否か」の二択ではない「第3の選択肢」を考えるという発想です。そして、その議論を具体化する『切り込み隊長』として、「3Dカード」のようなツールを活用することです。
「3Dカード」は、高齢ドライバー自身が考える「運転の理想像」を言語化するためのツールです。 これを使うことで、高齢ドライバーは自分の漠然とした思いを言葉にして家族やスタッフに説明できるようになります。家族もその具体的な思いを初めて知ることができます。情報が具体化されることで、単なる感情論から脱却し、具体的な対策等に関する議論が可能になるのです。
その結果、「免許を返納する/しない」という二者択一から、「例えば、安全に運転するための義務(走行エリアや時間帯の制限、サポカーの導入など)を果たすこと。それを条件に運転を継続を認める」といった、双方にとって納得感のある「第3の選択肢」。これが浮かび上がってきます。
もともと対話や福祉のプロが集まっている包括支援センターに、このような具体的に言語化させるためのツール(武器)を持たせれば、まさに鬼に金棒です。相談者から「本当に頼りになる相談先だ」と再評価される。それにより、地域での信頼や株が上がることは間違いありません。
これは対面相談を前提とした手法ですが、警察署などでも対面での免許相談が行われていると思います。包括支援センターに限らず、警察も含めたすべての相談窓口で導入を検討する価値がある。そのように考えています。
ちなみに、日本では「交通安全や免許関連の問題は警察が提供する無料サービスである」という認識が広く存在しています。しかし、それはお金やコストをかけない、ということではありません。相談とは、相談者を何らかの納得できる結論に導いてこそ「相談」と言えるはずです。そのために必要な努力を惜しまない。便利な民間の手法やツールがあるなら、それらを柔軟に導入していく姿勢。これが求められているのではないでしょうか。
社会全体で高齢ドライバーの免許返納を推進する動きが強まっていますが、家族との対立が激化するケースも少なくありません。こうした問題には、常識にとらわれない新しいアプローチが有効だと考えます。
高齢ドライバーとその家族に対して、単純な二者択一ではなく、双方が納得できる解決策を提供すること。それこそが、相談窓口に今もっとも求められていることなのではないでしょうか。
