【このブログの概要】
長年無事故で家族を支えてきた誇り(プライド)を持つ高齢ドライバーに対し、一方的な説得ではなく自発的な気づきを促す「語らせる対話」のご提案です。「他人の話は聞かないが自分の運転観は語りたい」という心理特性に着目し、「3Dカード」を使って親自身にテーマを選んでもらう対話のコツを解説します。感情的な衝突を避け、安全運転の継続(DCP作成)や納得感のある免許返納へと導く実践的なアプローチをお伝えします。
最近は自動車の事故やトラブルを少しでもなくそうと日々努力されている事業者さまとコンタクトを取っています。そして、私たちが問題視している社会課題の内容やそれを解決するための取り組み内容についてご説明させていただいています。
どこの事業者さまも、ご説明した内容にご共感いただける方が多く、共通認識として、自動車の運転に関してはプライドを持っている高齢ドライバーの方が多く、身内と言えどもその運転の仕方について、いろいろと注文を付けられることを良しとしない方が大半、という件(くだり)には深く頷いていただけることが多い印象です。長年無事故無違反で家族を支えてきたという自負があるからこそ、安易な指摘は自尊心を傷つけてしまうのだと思います。
そんなプライドの高いドライバーに、家族や友人と言えども「あーしろ」「こーしろ」などと上から目線でモノを言ったら、きっと、カチンときて途端に聞く耳を持たなくなり、硬い殻にじっど閉じこもってしまう状況が生まれるのは目に見えるようです。
高齢ドライバーは年齢が上がるほど自身の運転に自信を持つ傾向がある、と言われています。そして一般的に、自信を持っている人というのは、その自信ゆえに「他人の話を聞かない」傾向があります。これは感覚的にもよく分かるのではないでしょうか。
同時に、自信家の人には「自分の自信に基づいて、自分のことを話したい・語りたい」という強い心理的特性もあるそうです。そうなると、私たちが会話で何をしなければならないかが見えてきます。つまり、自信家である高齢ドライバー(親)には、指示をするのではなく「運転を語らせる」ことが重要なのです。
「普段どんなことを心がけて運転しているの?」「お父さん(お母さん)にとって運転の理想像ってどんなもの?」といった質問を投げかけてみると、それまで運転の話になると口を閉ざしていた親が、急に堰を切ったように話し始めるのではないでしょうか?
対話の鍵:「語りたいテーマ」を親自身に選んでもらう
ただし、いざ語らせようとしても、なかなか上手く言葉にならないこともあります。普段から情報を整理して伝える準備をしているわけでもなく、そんな質問をされた経験もないからです。思いついたことを片っ端から話した結果、言った本人も聞く側もよく分からなくなったり、運転とは関係のない話に逸れて収拾がつかなくなったりすることも容易に想像できます。
だからこそ、テーマを「運転」に絞り、その枠組みの中で建設的に議論する工夫が必要になります。
かつてフジテレビ系で放送されていた『ごきげんよう』という番組で、さいころを振って出た目(テーマ)について話すコーナーがありました。あのように「議論するテーマを明確に決める」というのは非常に大きなヒントになります。
しかし、親自身が興味のないテーマを押し付けられても、語りたい気持ちにはなれません。だったら、親自身に「語りたいテーマ」を選んでもらえば良いのです。
そこで提案したいのが、私たちが開発した「3Dカード(Driver’s Desire Discover Cards)」です。
「3Dカード」が引き出す本音と自発的な気づき
このツールには、運転の理想像となりそうな言葉が40種類書かれています。高齢ドライバー自身がその中から取捨選択し、自分の理想像に近いカードを選び出します。
自分自身で選んだカードだからこそ結果に納得感が非常に高く、「なぜこのカードを選んだの?」と理由を聞くだけで、それまで隠れていた本音や思いが一気に溢れ出してきます。
そこまで来たら、絶好の会話のチャンスです。
- 「なぜそう思ったの?」
- 「その理想を叶えるためには、これからどうしたらいいかな?」
- 「実現する上での妨げになりそうなこと(不安なこと)はある?」
このように問いかけていくことで、親も感情的にならず、建設的な議論に自然と乗ってきてくれます。
要するに、従来のやり方は「入り口」で失敗していたのです。親のプライドや心理特性を理解せず、いきなり正論や返納を迫るから門前払いに遭っていたに過ぎません。相手の特性に合わせてアプローチを変える――解決への道はこれしかありません。
あとはご家族の関わり方次第です。もし親が運転に強いこだわりを持っているなら、「安全運転を継続するための具体的な行動」へと質問を誘導していきます。逆に、安全運転への覚悟が薄く、単に意地になっているだけだと感じたら、その気持ちを汲み取った上で「ではどうサポートできるか」を一緒に考え、納得感のある免許返納へ導くことも十分に可能です。
何より大切なのは「最初の対話の入り口」です。ぜひここを工夫してみてください。
自発的な「行動」が誇りと安全をつなぐ架け橋になる
これまでにお伝えしてきた通り、ドライバーのプライドの高さから来る「あるべき姿(理想像)」を自ら考えてもらい、それに比して自身の「現状」を顧みてギャップに気づいてもらうこと。これで必要な情報を伝えるには十分です。この「気づき」こそが、自発的な安全行動を促す最大の原動力となります。
従来の自動車の安全運転に関する講習会に欠けていた部分は、このようなドライバーの「プライドが高い」という特性に寄り添った対応が、時間的な制約等もあって、十分できなかった点にあると考えています。一方的な知識の押し付け(プロダクトアウト)ではなく、ドライバーの心に寄り添うアプローチが今まさに求められています。
もし、「免許を返納せず、運転を継続する」というアクティブな選択をするなら、そしてそれが自身の「あるべき姿」だと思うなら、「行動」あるのみです。
運転を継続する以上、それなりの覚悟と行動が必要です。やりたいことを継続するためには努力も必要ですが、「自分のやりたいことのため」なら頑張れる高齢ドライバーも多いはずです。その具体的な努力の指針となるのが、自ら作成する「運転継続計画™(DCP)」です。
日本では高齢化がますます進んでいますが、颯爽と車を乗りこなして元気に生活されている方々が多くいらっしゃいます。日本をもっと元気にできるかどうかは、今日の発展を支えた年代の方々がこれからをどう生きるかにかかっています。
そのためのお手伝いがしたい、自動車の運転を通じて、世の中に貢献したい、という思いでこの事業を立ち上げました。私たちの提供する「3Dカード」などのツールが、ドライバーの誇りと安全をつなぐ架け橋になれば幸いです。
*「運転継続計画」はDSSJの登録商標です。

