高齢ドライバー問題の解決はプロダクトアウト!データドリブンで判断し「茹でガエル」を阻止!

現代のビジネスの基本は「マーケットイン」であり、お客様が望むものを提供する、という考え方が主流です。以前のような「良い商品だから買って」というプロダクトアウト的なアプローチは、現代ではなかなか通じないと感じます。
しかし、高齢ドライバーの事故が多発している、という問題に目を向けたときに、本当にマーケットの意向だけに従っていれば良いのか、という疑問を日々感じています。
連日のように報道される事故のニュースは、私たちに重い課題を投げかけているように感じます。高齢ドライバーによる事故が多い「だから高齢者は免許を返納すべきだ」という単純な結論にはしたくありません。しかし、早々に結論を出し、解決をしないと問題がどんどん大きくなって、そのうち取返しがつかなくなる可能性があると感じています。
見過ごされてきた問題の本質
高齢ドライバーの事故ばかりが大きく報道される一方で、他の年齢層が同様の事故を起こしてもあまり報道されません。もし報道されたとしたら、恐らく若者を中心とした事故の多さが浮き彫りになり、それはそれで別の問題を引き起こす可能性があります。しかし、それでも若者の事故に対して「免許返納」を求める声はほとんど聞かれないと思います。それは、若者の事故の大半の原因は「若気の至り」であり、運転に慣れれば改善の余地があると考えられているからでしょう。一方、高齢ドライバーの事故にはその余地がない、だから免許返納しろ、という声が多数上がるのだと思います。
私たちは、そうではなく、高齢ドライバーの事故を防止するために実施する措置や対策にまだまだ「余地」がある、だから事故が起きていると考えています。だからこそ、その改善の余地を社会に提案する活動を続けているのですが、多くの方々からは「現状で十分」というような反応が返ってきます。
停滞する対策と「茹でガエル」の懸念
最新の交通安全白書(令和6年版)を見ると、高齢者による自動車事故の件数は引き続き全体的に減少傾向にあります。これは、警察や自治体、関係企業のみなさまの汗と涙と努力の賜物だと思います。しかし、直近の数値だけを見ると、数値減少の勢いは鈍化し、まるで岩盤にぶつかって停滞しているように見えます。一部の年齢層では、これまで減少していた数値がわずかに上昇に転じているデータもあり、このままでは右肩上がりに変化する懸念さえ感じられます。
数値が改善しなくなった、あるいはむしろ悪化しはじめているという状況は、これまで実施してきた高齢ドライバーへの事故防止対策の効果が薄れてきているサインかもしれません。PDCAサイクルに照らせば、C(評価)の部分で対策を考え直す時期に来ている、と評価してもいい段階に来ているのに、なぜかA(改善)の部分で素通りして、何もなかったようにこれまでのP(計画)とD(実行)を実施している、というように見えます。
だから、私が接する多くの方々は、免許返納を中心とした現在の対策で問題ない、という反応なのかなあ、と感じてしまいます。まるで、現状の対策に「免疫」ができてしまい、「薬」が効かなくなっているかのように。そこで「問題は何も解決していませんよね、むしろ事故は毎日のように起きていて、事態は悪化しているではないですか」と聞くと、私に「大人になれ」と言われているような「空気」を感じます。
プロダクトアウトという挑戦
もしかしたら、私は市場が求めていないような対策(プロダクト)を声高に訴え、押し付けているだけなのかもしれません。基本はマーケットインであり、市場が不要と言うなら、それを受け入れるべきなのかもしれません。
しかし、このまま現状に新たな対策を投入せず、引き続きこれまでの対応を継続していると「茹でガエル」のように、事態が深刻化するまで、沸点に到達するまで、問題に気づかないのではないかという強い懸念があります。もし、現状のデータが示す事実が何らかの兆候だとすれば、誰かが警鐘を鳴らさないといけない、と感じます。
それをプロダクトアウトと呼ぶなら、プロダクトアウトもときには「善」なのではないでしょうか。iPhoneが登場した当時「こんなものは売れない」と言われたそうですが、結果としてiPhoneの商品としての魅力が新たな市場を創造しました。私たちの活動をアップル社と比較するのは大変おこがましいことですが、私たちがこれまでにない新たな市場を創り出そうとして行動しているのだ、だからプロダクトアウトの形を取ることもある、と信じ、これからも活動を続けていきたいと思います。