第5回:地域公共交通の「リ・デザイン」

免許を更新しながら安全運転を支える施策について触れた前回のシリーズに続き、今回は免許返納後の新しい移動手段をテーマにお届けしています。本シリーズの締めくくりとして、 mobility as a Service (MaaS)の基盤となる「地域公共交通の『リ・デザイン』」について解説します。
取り組みの概要
「地域公共交通のリ・デザイン」とは、地域の実情に合わせて公共交通の仕組みを「共創」によって再構築する取り組みです。人口減少や高齢化が進む中で、従来の運行方法では採算が取れず、交通網が縮小する地域が増えています。これに対し、行政や交通事業者、地域住民に加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)を掛け合わせることで、持続可能な交通モデルを作り上げる試みが加速しています。
具体的な取り組みとしては以下のような例があります:
- AIオンデマンド交通の普及
利用者の予約に対し、AIが最適なルートをリアルタイムで算出する小型バスや乗り合いタクシーの導入。 - 自家用有償旅客運送(自治体ライドシェア)の活用
2024年の法改正等により、地域の一般ドライバーが自家用車を用いて有償で送迎を行う仕組みが全国で拡大。 - マルチモーダル路線の構築
鉄道、バス、シェアサイクルなどを一つのアプリで予約・決済できる仕組みにより、乗り継ぎの利便性を飛躍的に向上。
メリットと利用者の声
メリット
- 「ドア・ツー・ドア」に近い移動の実現
地域のニーズに合わせた柔軟な運行により、従来のバス停まで歩く負担を軽減し、高齢者や移動困難者の外出機会を創出します。 - データに基づいた最適運行
乗降データを分析することで、過疎地でも無駄のない効率的な交通網を維持できます。 - 外出による健康寿命の延伸
「行きたい時に行ける」環境が整うことで、社会参加が促され、フレイル(虚弱)予防や認知症対策にも寄与します。
利用者の声
- 「バス停まで歩くのが辛かったが、スマホや電話一本で自宅前まで来てくれるので、買い物が楽しみになった。」
- 「近所の人が運転手をしてくれるライドシェアのおかげで、気兼ねなく通院できている。」
課題やデメリット
課題
- 「移動の質」の地域格差
自治体の財政力やITリテラシーによって、受けられるサービスに差が出てしまう懸念があります。 - デジタルデバイドへの対応
アプリ予約が主流になる中で、スマートフォン操作に不慣れな層への電話予約併用や代理予約システムの構築が不可欠です。 - 担い手不足の深刻化
2024年問題以降の運転手不足を補うため、自動運転の早期実装や住民ドライバーの確保が急務となっています。
利用者の声
- 「便利なのはわかるが、最初はアプリの使い方が難しく、家族に手伝ってもらった。」
- 「今はボランティアに近い形で運営されているが、将来も同じ料金で乗り続けられるのかが心配だ。」
今後の展望
地域公共交通のリ・デザインは、免許返納後の移動を「我慢」から「選択」へと変える希望の光です。今後は、「移動」と「医療・買い出し・物流」を掛け合わせた「貨客混載」やモバイルクリニックなどの普及により、移動手段そのものが生活を支えるプラットフォームへと進化していくでしょう。
「免許を返納しても、自分らしく移動できる権利」が保障される社会の実現に向け、地域全体でこの変化を支えていくことが求められています。
これで本シリーズは終了です。免許返納後の移動手段について考える際の一助となれば幸いです。
