交渉や面接に強い人はみんなやっています ~”最初の一歩”を明確に示す力~

高校入試の面接準備をする息子の様子を見て、つい口を挟んでしまった話です。塾の先生から「荒削りだけど悪くない」と言われた内容に、息子なりには全力を注いだようでしたが、その話を聞いた私は思わず「薄っぺらいなあ」と言ってしまいました。息子にしてみれば渾身の出来だったようで、明らかに傷つけてしまいました。
その場で自分の発言をフォローする必要があると感じ、息子と改めて話をしました。ある国の大統領が壮大なビジョンを掲げて当選した事例を例に挙げ、「彼が支持を得られたのは、なぜだと思う?私なりの考えだが、ただ大きな夢やビジョンを語ったからではない。その夢やビジョンを実現するために、まず何をするのかという”最初の一歩”を具体的に示したからだ」と伝えました。
そして、息子にもこう説明しました。「壮大な目標やビジョンだけでは、面接官には響かない。なぜなら、同じような話を何度も聞かされているから。相手に印象付け、真偽はさておき、きれいごとだけではなく、一理あるなあと理解・納得させるには、その目標やビジョンを実現するための最初の一歩を明確に伝えられるかどうかが重要だ」と。さらに、自分なりの仮説を立て、それを検証する方法についても話し合いました。その結果、息子は「自分でも考えてみる」と前向きな反応を見せてくれました。
壮大な目標やビジョンだけでは人は動かない
壮大な目標やビジョンを語るのは簡単ですが、それだけでは人の心に響きません。重要なのは、「その目標やビジョンを達成するために、最初に何をすべきか」を具体的に示すことです。この「最初の一歩を示す力」が、面接や交渉、そしてあらゆる人間関係において強力な武器になります。
私自身、サラリーマン時代に約500人近くの面接を担当してきました。その中で評価の高かった人たちには共通点がありました。それは、「自分の目標やビジョンに対して、最初に何をするか、すべきかを明確に説明できる」ということでした。逆に、どれほど壮大な目標やビジョンを語っても、それだけでは評価に繋がりません。一方、一見すると小さな行動計画でも、それが具体的であれば信頼を得ることができるのです。
それを裏付ける3つの事例
- アポロ計画の成功
1960年代、アメリカが「人類を月に送る」という壮大な目標やビジョンを掲げました。しかし、それだけでは人々の支持は得られませんでした。NASAは、具体的な行動計画として「ロケットの開発」「宇宙飛行士の訓練」などを示し、それを着実に実行することで最終的に月面着陸を成功させました。このプロセスは、「壮大な目標やビジョンには具体的な最初の一歩が必要」ということを証明しています。 - スティーブ・ジョブズの発表スタイル
スティーブ・ジョブズは、新製品を発表する際に「これがあなたの生活をどう変えるのか」を具体的に語ることで多くの人を魅了しました。革新的な技術やデザインだけでなく、「これを使うことで最初にどんな一歩を踏み出せるのか」を具体的に示したことが、彼のプレゼンの成功につながっています。 - ピーター・ドラッカーの理論
経営学者ピーター・ドラッカーは、「目標やビジョンを実現するためには、具体的で実行可能な行動を明確にすることが鍵である」と説いています。大きな目標やビジョンを掲げることは重要ですが、それを現実的な行動計画に落とし込まなければ意味がないという考え方です。
自分の希望を相手に伝えたい、と考えている方へ
これから面接を控えている学生の皆さんにも、この「最初の一歩を示す力」をぜひ意識してほしいと思います。壮大な目標やビジョンを語るだけでなく、それを実現するために何をするのかを具体的に伝えること。それが、面接官に「この人は本気で考えている」と信頼を与え、印象に残る話につながります。
また、この考え方は面接だけでなく、家庭内での議論にも応用できます。たとえば、車の免許返納を巡る問題。家族内でそれぞれ正しい主張をしていても、相手を納得させるためには「どんな最初の一歩を取るべきか」を明確に示す必要があります。その具体的な一歩が話し合いの糸口となり、問題解決への道を開くのです。
相手を説得したい、信頼を得たいと思うとき、壮大な目標やビジョンだけを語っても不十分です。その目標やビジョンを実現するために何をするのか、足元にある最初の一歩を明確に示してください。それが、あなたのメッセージを強くし、相手の心を動かす鍵になるのです。