強行手段という地雷は絶対NG!高齢の親に「免許返納」をさせる前に考えるべきこと

年度末から年度初めにかけて、高齢ドライバーによる痛ましい事故が相次いで報道されました。ニュースを見るたびに、遠く離れて暮らす親御さんのことが心配になった方も多いのではないでしょうか。6年前に発生した池袋での事故の直後は、免許返納する人が増えたという現象も起きています。もし自分の親が事故を起こしてしまい、誰かを巻き込んでしまったら…そう考えると、これまで平穏に暮らしてきた親御さん自身も、その家族も、深い悲しみと後悔に苛まれることでしょう。
だからこそ、「そろそろ免許返納を考えたら」と家族が声をかけるわけですが、親御さんがあっさり「わかった」と応じてくれるとは限りません。「まだ大丈夫」「運転しないと生活できない」と、返納を拒むこともあるでしょう。今回は、そのような状況に直面した際に、どのように親御さんと向き合い、話し合いを進めていくべきか、そのヒントを探ってみたいと思います。
反発を招かないための初期対応:共感と傾聴から始める
長年連れ添った愛車との別れは、高齢の親御さんにとって、単に移動手段を失う以上の意味を持つことがあります。学校を卒業してすぐに免許を取得し、50年以上も運転してきたという方もいるでしょう。それは、配偶者や子どもよりも長い時間を共にした、かけがえのないパートナーのような存在かもしれません。そのような心情を理解せずに、「危ないから」「もう歳だから」と頭ごなしに免許返納を迫るのは、逆効果です。
まず大切なのは、親御さんの気持ちに寄り添い、丁寧に話を聞くことです。高齢ドライバーによる事故のニュースについてどう思うか、何歳くらいまで運転したいと考えているか、今後運転してみたい場所や目的はあるかなど、様々な角度から意見や要望を尋ねてみましょう。
運転をする人には、多かれ少なかれ自分の運転に対する「美学」や「プライド」のようなものがあります。それは、他人から自分の運転を評価されたり、口出しされたりすることを極端に嫌う、という現象が物語っていると思います。親御さんのそうした気持ちを尊重し、まずはドライバーとしての思いや考えに耳を傾けることが、対話の第一歩となるはずです。
心を開く対話のステップ:夢の実現をフックにする
親御さんの運転に関する希望や夢などをじっくりと聞く中で、もしかしたら、まだ達成できていない「未練」のようなものが見えてくるかもしれません。「いつか夫婦で温泉旅行に行きたい」「孫を迎えにドライブしたい」といった夢は、親御さんにとって運転を続ける大きな動機・モチベーションになっている可能性があります。
そこで提案したいのは、その夢の実現に向けて一緒に考えてみよう、と持ちかけることです。いつ、誰が、何を、どうするのか、ということを具体的に話し合い、夢の実現に向けた計画を立ててみましょう。この過程で、子どもである私たちも知らなかった親御さんの新たな一面を発見できるかもしれません。
そして、「夢の実現に向けて、一緒にやってみよう」と行動を促してみるのです。親御さんの夢を真剣に叶えようとする姿勢は、親孝行にも繋がり、親御さんの心を動かす力になるはずです。もしかしたら、その過程で親御さん自身が体力的な不安を感じたり、夢の実現に向けた行動が負担になり、運転への自信を失ったりするかもしれません。でもそれは、運転に関して親御さんが自分自身と向き合い、自分なりの結論を自身が出すために納得感が高い結果をもたらします。
また、人間は目標を達成すると、次のモチベーションを見つけにくくなることがあります。もし夢が実現した後も親御さんが運転を続けたいという意欲を示したら、それはアクティブな証拠です。その際は、安全運転のための対策を一緒に考え、定期的に見守るという形でサポートしていくと良いでしょう。
リスペクトの気持ちを持って、長期的な視点で向き合う
親の運転免許返納問題は、非常にデリケートな問題です。第三者の意見や助言は参考になるかもしれませんが、最終的な解決を外部の事業者等に委ねるのではなく、家族として真摯に向き合い、双方納得のもと、解決することが大切ではないか、と個人的には思います。
これまで育ててくれた親への感謝の気持ちと尊敬の念を持ちながら、運転に関する意見や要望を聞き、それを実現するために何ができるかを一緒に考える。少し根気のいることかもしれませんが、「頑張れるなら応援する」というスタンスで接することも重要ではないでしょうか。
親御さんの希望の中には、きっと「安全に運転したい」「家族に迷惑をかけたくない」という思いも含まれているはずです。その思いを大切に、夢の実現という目標を設定しながら、長期的な視点で免許返納について話し合っていくことが、円満な解決に繋がるのではないでしょうか。そして、この問題は決して他人事ではありません。今は問題なく運転ができている現役世代も「明日は我が身」ということを忘れずに、自分ならどうされれば、免許返納に納得するか、と言う観点から、高齢ドライバーである親御さんと向き合ってみてください。