家族から「免許返納」と言われたときに考える3つのチェックポイント

現役を引退され、時間にゆとりができた今、趣味や日々の買い物など、自動車で自由に移動して楽しい時間を過ごされている方も多いのではないでしょうか。週末しか運転できなかった現役時代とは違い、気が向いたときに愛車を走らせ、パートナーの方の役にも立てて、喜ばれている。そんなかけがえのない時間を過ごされているかもしれません。
しかし、そんな穏やかな日々に、不意に波紋が広がる瞬間があります。それは、高齢ドライバーによる痛ましい事故がニュースで報じられたとき、そして、免許更新のお知らせが届いたときではないでしょうか。
ニュースで報じられる事故の発生場所が近所だったり、事故を起こしたドライバーの年齢や境遇が近かったりするものなら、離れて暮らすご家族などから心配の連絡が。そして「心配だから、運転はもうやめたら?」そんな言葉が投げかけられるかもしれません。また、免許更新のお知らせを見たご家族から、「これを機に、免許を返納したら?」といった声があがることもあるでしょう。
そんな時「そうだね、もう返納しようか」と素直に思えるなら、それが一番良い免許返納のタイミングかもしれません。しかし「免許を返納したら、車が使えなくなり、生活できなくなってしまう」と感じ、申し出を固辞する、ということもあると思います。
もしそのような状況にあるなら、一度立ち止まって、以下の3つのポイントを順番に確認してみてはいかがでしょうか?
チェックポイント1:免許返納後の「足」の確保
👉自動車がないと生活できないか?
まず最初に確認すべきは、自動車に乗らなくなった場合でも、日常生活を送ることができるかどうかを考えましょう。
- 自動車以外の移動手段(公共交通機関、自転車、徒歩など)は利用できますか?その実態はどうでしょうか?
- ご家族や地域のサポートなどに移動に関する支援は受けられそうでしょうか?
- 自動車がない生活をイメージして、自動車がないと目的を果たせず、かえって不満やストレスを感じてしまうようなことがありますでしょうか?
ここでは自動車がなくても生活ができるのか、自動車が必要なのかを確認します。そして、後者の場合、次のチェックポイント2へ進みます。
チェックポイント2:「運転」への想いと現実
👉なぜ、あなたは車に乗りたいのか?
次に、あなたが自動車に乗る実現性や懸念事項、車を使うことで達成したい目的を改めて考えてみましょう。
- 自動車に関する費用や運転するための環境は今後も問題なく確保できるでしょうか?
- ご自身の体調、運転に求められる能力等、安全運転をする上での問題はないでしょうか?
- 何のために自動車に乗り、どんなことに注意を払い、何を目指していますか?
ここでは、自動車を運転するための現状(技術、ハード、情報)を中心に確認します。そして自問自動し、致命的な阻害要因がないことが確認できたら、次のチェックポイント3へ続きます。
チェックポイント3:安全運転を続けるための「覚悟」
👉これからも運転を続けるために、何をするべきか?
そして最も重要なことである、これからも安全に運転を続けるために具体的に何をするのかを考えてみましょう。
- ご家族を安心させる安全運転を続けるために、どんな「覚悟」があることを、どのように示しますか?
- 今後も安全運転を続けるために、どんなことに気をつけますか?
- 安全運転を妨げる可能性のある要因(天候や時間帯による視界不良、不案内な道路の走行など)には何があり、それらにどのように対処しますか?
- いつかは迎える「運転卒業」のタイミングについて、どのように考えていますか?
ここで、自動車を運転するための現状(マインド)を確認します。チェックポイント2で確認した技術、ハード、情報、そしてこのマインドの4つが揃えば、安全運転を継続するための4条件が揃います。
「点」から「線」へ
ご家族が免許返納を勧めるのは、何よりもあなたの事故を心配しているからです。上記チェックポイントにより、あなたが引き続き行うべきこと、つまり「計画」が考えられ、そしてその「覚悟」を示すことができたら、ご家族の懸念は和らぎ、運転を継続する理解や納得が得られるはずです。
でも重要なのは、ご家族の「理解を得る」という「点」の行為ではありません。計画を立て、覚悟を決めたら、それを継続して実行する「行動」、つまり「線」の行為が何よりも重要です。安全はこの日々の積み重ねである「線」の行為により、維持されるものです。
もしご家族があなたの運転を継続することに理解を示してくれたとしたら、その最大の要因は、安全運転のために計画を考えた、という「点」ではなく、その内容を「継続して実行する」という「線」の姿勢を評価したからです。ですから、その「線」を切るような行為、つまり計画倒れに終わってしまうようなことがあれば、信頼は失われてしまうでしょう。そうならないためにも、チェックポイント2で確認した「運転の目的」を確認し、そこに強い気持ちがあれば、その大変さを乗り越えることができるはずです。
何か目標を持ち、それに打ち込むことは、人生を張りと豊かさを与えてくれます。現役時代は社会のため、会社のため、家族のために頑張ってこられたかもしれませんが、これからはその頑張りを自分の目標達成ために使ってみる。そんな意気込みで、もう一度「運転」と向き合ってみるのもいいと思います。特に趣味と呼べるものがないという方にとって、自動車の運転に真剣に向き合うことは、移動手段の確保という実益もあり、長続きできるのではないでしょうか。
一度きりの人生ですから、他人から言われずに自分で判断し、主体的に生きる、そんな姿勢が安全運転のために一番必要なのかもしれません。