第1部:家族ができる外的アプローチの限界と運転継続計画の提案
外的アプローチと内的アプローチの違い
免許返納に関する対話では、外的アプローチと内的アプローチの違いを理解しておくことが重要です。
- 外的アプローチ:データや第三者の意見を用いて説得する方法。家族が主導して情報を提示するのが特徴です。
- 内的アプローチ:高齢ドライバー本人が自身の価値観や状況を振り返り、納得感を持って行動を決める方法。
外的アプローチは問題意識を高めるきっかけとして効果的ですが、内的アプローチによって本人が納得して行動に移ることが、最終的な解決につながります。
高齢ドライバーへの説得でよく言われること
免許返納を巡る家族間の対立は、感情的なものになりがちです。そのため、多くの情報源で以下のような注意点が提案されています。
- 頭ごなしに説得しないこと:親のプライドを傷つけないように、感謝や理解を示しながら話すことが推奨されます。
- 免許やカギを隠さないこと:強制的な手段を取ると信頼関係が崩れるリスクがあります。
- 不安を取り除ける対応策を提示すること:交通手段の代替案を一緒に考えるなど。
- 適切な時間と場所で話し合うこと:落ち着いて話せるタイミングを選ぶ。
これらの方法はどれも重要ですが、実際にはこれらを守っても高齢ドライバーが納得して免許を返納するとは限りません。なぜなら、これらの外的アプローチが本人の価値観や理由と噛み合わない場合、説得が失敗に終わることが多いからです。
外的アプローチが噛み合わない例
例えば、コストを引き合いに出して説得しようとしても、本人がそもそも経済的な理由で免許返納をためらっているわけではないケースがあります。このように、家族が説得の材料として選ぶ内容が、高齢ドライバーの価値観や理由と一致しないと、労力が無駄に終わることになります。
さらに、高齢ドライバーがなぜ免許返納をためらうのか、正面から聞き出すのは非常に難しいものです。これには以下のような理由があります。
- 本人も明確に自覚していない場合がある。
- 感情的な対立を避けるために、理由を隠してしまう。
- 家族との関係性の中で話しづらいと感じている。
運転継続計画という新しい提案
こうした状況で家族としてできるのは、対立を避けつつ建設的な話し合いの場を作ることです。その一つの方法として、「運転継続計画(DCP)」を一緒に作ってみないかと提案することが考えられます。
運転継続計画は、以下のような利点があります。
- 高齢ドライバー本人の意見を尊重するアプローチ:免許返納を迫るのではなく、今後の運転について冷静に考える機会を提供します。
- 家族との協力を促進:計画を一緒に作ることで、家族も高齢ドライバーの考えを知ることができます。
- 対話のきっかけを作る:一方的な説得ではなく、相互の理解を深めるプロセスになります。