マニュアル車が高齢ドライバーを救う? 私の実験と発見

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マニュアル車の操作イメージの図

先日のブログでオートマ車とマニュアル車についていろいろと考えてみました。私の自宅にある車はオートマ車ですが、正直言って、実際にマニュアル車に乗らないと高齢ドライバーによる事故防止対策の本質が見えてこないと感じ、さっそく取り掛かることにしました。

その矢先、肝心のマニュアル車を探すことが大変な状況であることが判明しました。幸い実家に実母が使用していたマニュアル車が残っているおかげで、「操作と事故の因果関係」を紐解く実験ができることは、正直ラッキーだと感じました。ちなみに、実母は80歳までずっとマニュアル車にこだわり続け、免許を返納するまでマニュアル車を運転していました。彼女曰く「オートマ車は怖い」とのこと。オートマ車の「勝手に進んでしまう機能」への恐怖心は、実は安全運転の本質を突いていると思います。

なお、実母はアクセルの操作が正確で、事故のリスクを感じたことはありませんでしたが、最近はペンのキャップをはめられないほど遠近感が怪しくなり、耳も遠くなってきたため、歩行者の接近に気づけず、車のクラクションも聞き取れないと判断し、家族で「運転継続計画(DCP)」を対話のベースにしながら免許返納を進めました。

さて、本題ですが、さっそくマニュアル車に乗りながら、その影響についていろいろと考えました。久しぶりにマニュアル車を運転してみて、まず坂道発進が心配でしたが、体が覚えているもので、思ったよりもサイドブレーキを使いながら半クラッチの操作も難なくできました。これなら、実母のように長年マニュアル車に慣れている高齢ドライバーは、もっとスムーズに操作できるのかもしれません。

このとき特に感じたのは、マニュアル車の「クラッチ操作」がポイントだということでした。もし運転中に危険等を察知したときは、私の場合、すぐにクラッチとブレーキを踏む癖があります。この「パニック時にクラッチを踏むと駆動が切れる」という物理的な構造のおかげで、暴走を防げる可能性が高いと感じました。右足一つに頼るオートマ車にはない、物理的な安全装置と言えるのではないでしょうか。

また、マニュアル車を運転して改めて気づいたのは、エンジン音が重要な手がかりになっているということです。例えば、エンジン音が大きいのにスピードが出ていないときは、クラッチがうまくつながっていないとわかるし、逆に音が低すぎるときはエンジンがエンストしそうだと判断できます。この「音によるフィードバック」は、オートマ車にはあまりない感覚で、安全運転に役立つものだと感じました。

今のハイブリッド車や電気自動車は非常に静かです。これは周囲の環境に配慮した良い点ではありますが、ドライバーにとっては、エンジン音がなくなった分、危険な兆候を見逃しやすくなるのではないか、とも感じました。特に耳が遠くなっている高齢ドライバーにとっては、自車の状態を把握する「情報の可視化(可聴化)」が失われることが大きなリスクになるのではないかと思います。

実母のような高齢ドライバーが、車から聞こえる音やエンジンの感触を頼りに運転してきた背景を考えると、音の静かな車が高齢ドライバーにとっての事故要因のひとつになっている可能性もあります。エンジン音がない代わりに、異常を知らせる音が発せられる仕組みや、ドライバーが音や振動等を頼りに、様々な判断ができる新しい技術が求められているのかもしれません。

でも、そのためにマニュアル車に戻るのは現実的ではありません。そのかわり、車の操作が簡便化されすぎている現状を見直す必要があるかもしれません。例えば、オートマ車でもパドルシフトを活用して自らスピードを制御する習慣をつけたり、車を前進させる際に何らかの手間や操作を敢えて必要とする仕組みや、非常停止ボタンの全席導入など、安全性を高める工夫はまだまだあるのではないでしょうか。

このブログを読んで、同じように家族と免許返納で悩んでいる高齢ドライバーが、単なる運転する「年齢」の議論ではなく、「操作と身体機能の相性」という視点から安全運転についてもう一度考えるきっかけになれば幸いです。

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