第1回:家族と対立する高齢ドライバー問題—海外の取り組みとその現実
高齢ドライバーが免許を返納するかどうか、これは家族にとって大きな問題です。特に日本では、車は地方に住む高齢者にとって不可欠な交通手段であり、免許を手放すことは自立心の喪失を意味することがあります。こうした家族内の葛藤は、決して日本だけの問題ではなく、世界中の高齢化社会で起こっています。そこで今回は、海外でどのように高齢ドライバーの問題に対処しているのかを紹介し、その取り組みがどのように役立つかを考えてみたいと思います。
アメリカとカナダの事例
アメリカでは、高齢ドライバーに対して州ごとに異なるアプローチが取られています。多くの州では、免許更新時に75歳以上のドライバーに対して健康診断や視力検査、認知機能テストが義務付けられており、これに合格しなければ免許を更新することができません。アメリカは広大な国土を持ち、特に地方部では車が主要な移動手段であるため、免許返納は生活の質に大きく影響を与えます。そこで、家族や専門家が協力して高齢ドライバーの運転能力を評価し、免許を手放すかどうかを慎重に検討する仕組みが設けられています。
一方、カナダでも同様の課題があります。特に高齢者の多い地域では、免許返納後の生活をどのように支えるかが大きな問題です。カナダでは、自治体ごとに高齢者向けの移動支援プログラムが提供されており、公共交通機関が利用しやすく整備されている都市部では、車を手放すことが生活に大きな影響を与えない仕組みができています。しかし、地方部では依然として車が生活に不可欠であり、家族間の対立も多く見られます。
イギリスの取り組み
イギリスでは、高齢ドライバーが70歳になると免許を更新する際に自己申告で健康状態を報告する義務があります。また、認知機能の低下や病気によって運転が危険と判断される場合、医師からの診断書が必要となります。イギリスでは高齢ドライバーの事故率は低いものの、事故が発生した場合は重大な結果になることが多いため、運転継続の判断が非常に重要視されています。特に都市部では公共交通が発達しているため、免許返納後の生活が比較的スムーズに移行できる環境が整っていますが、地方では日本同様に車に依存している地域も多く、免許返納が家庭内での大きな課題となることもあります。
次回は、スウェーデンの先進的な取り組みについて詳しく見ていきます。スウェーデンがどのようにして高齢ドライバーの免許返納問題に対処し、家族間の対立を防いでいるか、その具体的な手法を探ります。
次回に続く