第3回:目標を達成すると意欲が変わるという心理学的根拠

達成感の図

目標達成が意欲に与える影響

心理学の研究によれば、目標を達成することで人間の意欲や行動は大きく変化します。達成感は単なる一時的な満足感にとどまらず、新たな行動を起こすための重要な原動力となるのです。この視点は、高齢ドライバーが目標を達成した後、どのように免許返納を受け入れるかを考えるうえで非常に重要です。

自己効力感と達成感

心理学者アルバート・バンデューラの「自己効力感理論」によれば、人は自分の行動が成果を生むと感じることで、次の行動への意欲を高めるとされています。たとえば、「家族と最後の遠出を楽しむ」といった目標を達成した高齢ドライバーは、その成功体験によってポジティブな感情を得られます。この感情は「自分にもまだできる」という自己効力感を高め、その後の新しい行動、具体的には免許返納への一歩を踏み出す勇気につながる可能性があります。成功体験は、単に過去の満足として終わるのではなく、未来を見据えた行動を促進する力を持っています。

脳内報酬システムの働き

目標を達成した際、脳内で分泌されるドーパミンは、達成感を生むだけでなく、心理的な充足感を与えます。この充足感は、未達成の目標への執着を和らげ、新しい状況や変化を受け入れやすくする効果があると考えられています。特に高齢ドライバーにとって、目標達成の喜びが免許返納という選択肢を前向きに捉える契機になる可能性があります。この脳内の仕組みを理解し、活用することで、より自然な形で変化に対応できる環境を整えることができるでしょう。

目標達成後のリスクとサポートの重要性

一方で、大きな目標を達成した後に「燃え尽き症候群」や喪失感を感じることも少なくありません。特に、運転をやめることで日常の中での役割を失ったと感じる場合、その影響は心理的に大きいものとなる可能性があります。そのため、高齢ドライバーが目標を達成した後も、家族が寄り添い、免許返納後の新しい生活目標を一緒に考えることが重要です。たとえば、公共交通機関の利用や地域コミュニティへの参加をサポートすることで、日常生活の充実感を維持する手助けをすることができます。このようなアフターケアが、免許返納という大きな決断をより円滑に進めるための鍵となるでしょう。

次回予告

次回は、この心理的な仕組みを活用し、具体的に免許返納を進めるためのDCP(運転継続計画)について提案します。この計画がどのように家族と高齢ドライバーの橋渡し役となり得るかを詳しく考察します。

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