第2回:漠然とした目標を家族と一緒に実現するという提案

漠然とした目標を形式知化する、の図

目標の棚卸しを始めてみる

高齢ドライバーが心の中で抱える「漠然とした目標」は、本人も家族もその存在に気づいていないことがほとんどです。これらの目標を明確にし、家族とともに「棚卸し」することは、問題解決に向けた第一歩となります。この作業を通じて、免許返納をめぐる家族間の対立に新たな方向性を見出すことができるかもしれません。

心理学が示す自己実現の重要性

心理学者エイブラハム・マズローの「欲求階層説」によれば、人間の最も高次な欲求は自己実現欲求であるとされています。高齢ドライバーにとって、運転は単なる移動手段にとどまらず、「家族を守る」「誰かの役に立つ」といった目標を達成するための重要な自己実現の手段でもあります。そのため、運転を続けたいという気持ちには、単純な移動の利便性以上の深い意味が込められていることが多いのです。

棚卸しの具体的な方法

家族で話し合う際に役立つ具体的な質問例を以下に挙げます。

  • 「運転を通じて達成したいことは何ですか?」
  • 「どんな思い出を残したいと考えていますか?」
  • 「家族として、どのようなサポートが必要だと感じますか?」

これらの質問を通じて、高齢ドライバーの抱える「やり残したこと」を浮き彫りにし、それを家族が共有することができます。目標を具体化することで、家族とともにその実現に向けた計画を立てることが可能になります。これにより、高齢ドライバーが安心して免許返納を検討できる環境が整うかもしれません。

目標実現の負担とその価値

目標の実現には、家族が時間を割いたり費用を負担したりする必要が生じることもあります。しかし、その取り組みにはそれ以上の価値があります。たとえば、家族全員で一つの目標を共有し、それを達成するプロセスを通じて家族内の絆が深まります。こうした経験が高齢ドライバーにとっても家族にとっても心の支えとなり、最終的にドライバー自身が納得感を持って免許返納に向き合える可能性を高めます。

次回予告

次回は、目標を達成することで心理的にどのような効果が得られるのかについて、さらに深く掘り下げていきます。このプロセスがどのように高齢ドライバーとその家族を前向きな選択へと導くのかを考察します。

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