第1回:免許返納から運転継続までのキャズムとは?
高齢ドライバーが免許返納を含めた「運転を継続するためのプロセス」にはいくつかの段階が存在します。その中でも、家族との話し合いが必要になる時期に大きな壁が立ちはだかります。これは「キャズム」(Chasm)と呼ばれる、乗り越えがたい障壁や深い谷の概念に類似しています。もともとは技術の普及や市場開拓において使われる言葉ですが、ここでは一連のプロセスにおける心理的な障壁を指します。
高齢ドライバーが運転を継続するためのプロセスを以下の4つの段階に分けて考えます。
- 第一期(意識する時期):この時期は、高齢ドライバーの交通事故に関する情報や免許更新の案内、友人知人からの口コミ情報など、免許返納を意識するきっかけが増える時期です。様々な情報が錯綜し、高齢ドライバーやその家族にとって不安や迷いが生じることも多いでしょう。
- 第二期(議論する時期):免許返納について具体的に話し合いを始める段階です。この時期には、感情的な対立が発生しやすく、家族間での意見の食い違いが大きな「キャズム」として立ちはだかります。
- 第三期(対策を考え実行する時期):家族から免許返納をしないことの了承を得て、免許更新をパスするために様々な対策を講じる時期です。ネット上の情報や書籍を参考にしたり、試験の準備をするなど、具体的な行動が伴います。
- 第四期(運転を続ける時期):無事に免許を更新した後、高齢者特有の事故リスクに対処するため、様々なサポート商品やサービスを活用し、リスクを最小限に抑えながら運転を続ける時期です。
特に第二期の「キャズム」は、家族間の議論や感情的な摩擦が大きな障壁となるため、これをどう乗り越えるかが重要なポイントとなります。
次回は、各段階における支援策の具体的な例を取り上げながら、特に第二期が手薄になっている現状について掘り下げていきます。