第6回:衝突被害軽減ブレーキの基準策定

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衝突被害軽減ブレーキの図

免許返納をせずに安全運転を継続するための施策を7回シリーズで紹介しています。これまでに「高齢運転者に対する教育」「運転免許証の自主返納制度等の周知」「安全運転相談の充実・強化」「高齢運転者標識の普及啓発」「高速道路における逆走対策の推進」を解説してきました。今回は「衝突被害軽減ブレーキの基準策定」についてご紹介します。

取り組みの概要

衝突被害軽減ブレーキ(Advanced Emergency Braking System: AEBS)は、車両に搭載されたセンサーが前方の障害物を検知し、衝突の危険性が高まった際に自動でブレーキを作動させるシステムです。この技術は、高齢ドライバーの反応速度や判断力を補うだけでなく、ヒューマンエラーによる事故を物理的に防ぐ目的で開発されました。

国土交通省は、この技術が適切に機能するための性能基準を策定し、国産の新型乗用車については2021年11月から、継続生産車についても2025年12月までに順次、搭載を義務付けています。これにより、中古車市場を含む流通車両全体の安全底上げが進んでいます。

メリットと効果

衝突被害軽減ブレーキの導入には、以下のようなメリットと効果があります。

  1. 事故の未然防止と被害軽減
    瞬時の判断が難しい状況でもシステムが補完するため、追突事故などのリスクが大幅に低減されます。万が一衝突を避けられない場合でも、速度を落とすことで被害を最小限に抑えます。
  2. 高齢ドライバーの心理的負担軽減
    万が一の緊急時にシステムがサポートすることで、高齢ドライバーが安心して運転を続けることができます。
  3. 同乗者や他の道路利用者の安全性向上
    高齢ドライバーの運転による事故リスクが減少することで、社会全体の交通安全にも寄与します。
  4. 「サポカー限定免許」への対応
    身体機能の変化に応じて「サポートカー限定免許」への切り替えを選択する際、AEBS搭載車であれば、免許を返納することなく運転を継続できる法的枠組みが整っています。

懸念点と課題

以下の課題もあります。

  • システムへの過信と正し理解
    「システムがあるから大丈夫」という過信は禁物です。天候や道路状況によっては作動しない限界があることを正しく理解するための啓発活動が不可欠です。
  • 既存車両への後付け支援
    衝突被害軽減ブレーキを搭載した新車への買い替えは大きな出費となります。新車購入が難しい層に対し、ペダル踏み間違い急発進抑制装置などの「後付け安全装置」の普及と、その有効性の周知が求められています。
  • システムの信頼性向上
    技術が進歩する一方で、誤作動や期待する効果が得られない場合への対応およびセンサーのメンテナンス(特定整備)体制の維持が求められています。

今後の展望

衝突被害軽減ブレーキの普及は、免許を継続したいと考える高齢ドライバーにとって大きな安心材料です。同時に、免許返納後の生活においても、同乗者や家族が利用する車両の安全性向上に寄与します。今後はさらに中古車を含めた手頃な価格での普及と、高齢ドライバーへの技術教育が求められます。

高齢ドライバーのみなさんは、「技術に頼り切る」のではなく「技術を味方につける」という意識を持ち、安全に運転を続けるための必須アイテムとして運転継続計画(DCP)の中に取り入れることを検討されてはいかがでしょうか。

次回はいよいよ最終回、「安全運転サポート車の普及促進」について解説します。ぜひご期待ください!

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