第2部:放置すれば社会全体に広がる影響

問題は解決しようの図

前回のブログでは、高齢ドライバーの免許返納問題は他の社会問題と比べると優先順位が低いように見える、という点についてお話ししました。しかし、実際にはこの問題を軽視することで、私たちの社会にどのような影響が及ぶのでしょうか。今回はその具体的な影響について掘り下げて考えてみたいと思います。

免許返納が引き起こす認知症リスク

高齢ドライバーの免許返納は、交通事故のリスク軽減というポジティブな側面がありますが、その一方で、免許返納によって生じる意外なリスクも存在します。その一つが、認知症リスクの増加です。

ある研究では、免許を返納した高齢者は、運転を続けている高齢者と比べて認知症の進行リスクが約8倍に上ることが示されています。運転をやめることで外出機会が減り、社会との接点が薄れることが原因とされています。行動範囲が狭まり、人との交流が少なくなることで、精神的・身体的な健康が損なわれるのです。

認知症が進行すると、医療費や介護費用が増えるだけでなく、家族や社会全体の負担も大きくなります。高齢者が免許を維持し、適切なサポートを受けながら元気に社会活動を続けることで、このリスクを軽減し、医療費の増加を抑えることが可能です。

社会全体に波及する具体的な影響

免許返納問題は、単に個人や家族の問題にとどまらず、社会全体にも影響を及ぼします。この問題を適切に捉え、解決策を考えることが重要です。

1. 高齢者医療費の削減に寄与する可能性

免許返納に伴う認知症リスクの増加は、社会全体の医療費負担を膨らませる要因となり得ます。一方で、運転を継続し社会活動を維持できる高齢者が増えることで、認知症の進行を遅らせたり予防したりする効果が期待されます。結果的に、高齢者の医療費削減につながる可能性があります。

2. 労働人口の減少を食い止める可能性

免許を持つ元気な高齢者は、社会で活躍する労働力として貴重な存在です。運転を継続することで行動範囲を広げ、地域のビジネスやボランティア活動に積極的に参加できます。特に地方では、車がなければ通勤や仕事が難しい場合も多く、高齢者の活躍の場が広がることは地域社会の活力向上にもつながります。

免許返納問題に向き合う意義

一見すると緊急性が低く、個人の選択の問題に思える免許返納問題。しかし、その裏側には社会全体に影響を与える構造が潜んでいます。認知症リスクや労働力不足の問題に目を向けると、免許返納は単なる「事故防止」だけでなく、社会全体の持続可能性を左右する課題だと分かります。

だからこそ、この問題を「低優先度の社会問題」として片付けるのではなく、長期的な視点で対策を進めていくことが重要です。免許を継続するにせよ返納するにせよ、高齢者と家族が納得感のあるプロセスを共に築き上げることが、社会全体の利益につながります。

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