高齢ドライバーの免許返納の是非

本日(8/11)、テレビを見ていたところ、番組予告で件名に関する放送があることを知りました(テレビ朝日系列「ビートたけしのTVタックル」、東京では12:00~12:55に放送)。さっそく番組内容を確認しましたので、以下に概要をお伝えします。

番組で紹介されていた事故の事例は以下の3件です。

  • 7月31日、群馬県藤岡市の貯水池にて、77歳男性が運転する自動車が水没し、死亡。貯水池付近はカーブが多く、アクセルとブレーキを踏み間違えて転落。
  • 6月、名古屋市で75歳の男性が運転する車が右折時に電柱を避け、反対車線の防護柵に衝突。ブレーキとアクセルを踏み間違えたことが原因。
  • 2023年4月、市川市で高齢男性が運転する自動車が駐車場を出て、正面のアパートに衝突。精算の際に落とした硬貨を拾おうとして車が動き出し、止めようとしてアクセルを踏み間違えた。

また、高齢ドライバーによる事故発生件数(出典:警視庁)は以下のとおりでした。

  • 2023年:4,819件
  • 2022年:4,579件
  • 2021年:4,370件
  • 2020年:4,246件

運転免許更新時の義務として、70歳以上は高齢者講習、75歳以上は認知機能検査が義務付けられています。高齢者講習の実態として、以下のような事例が紹介されていました。

  • 赤信号の見落とし
  • 段差に乗り上げて植え込みに衝突
  • 運転中に座席位置を調整する

さらに、高齢ペーパードライバー向けの出張ドライブ講習も紹介されていました。指導者が受講者の希望場所まで出向き、実践的な訓練を行うというものです。紹介された例には以下のものがありました。

  • 左右の方向指示器の出し間違い(ウインカーを逆方向に点灯)
  • 急な進路変更
  • 一時停止を無視(停止線で止まれない)
  • 青信号になっても発進しない

高齢ドライバーの増加に対応するため、5月にさいたま市に全国初の「岩槻高齢者講習センター」が開設されました。これにより、高齢者講習の予約待ちが最大170日から平均30日程度に短縮されたそうです(出典:埼玉県警)。なお、埼玉県内の70歳以上の免許保有者数は、2014年の48万3000人から2023年には71万8000人に増加しています。

高齢者が車を使い続ける理由としては、以下のような声が紹介されていました。

  • 「買い物で重いものを運ぶのが大変だから」(74歳女性、80歳くらいまでは運転したい)
  • 「奥様の運転手なので」(82歳男性、86歳くらいまでは運転したい)
  • 「ゴルフに行きたい」(86歳男性、92歳くらいまでは運転したい)

75歳以上の運転免許自主返納数は、ここ数年で減少しているとのことです。

番組内で精神科医の和田秀樹さんが主張されていたのは、「高齢者の免許返納には反対」という立場です。その理由として、「免許返納によって老いが加速する可能性が高まる」とのこと。筑波大学の市川政雄教授の調査では、「運転をやめた人は、運転を続けている人に比べて、要介護認定のリスクが2.16倍になる」とされ、国立長寿医療研究センターの調査でも「運転をやめた人は要介護状態になるリスクが約8倍に上昇」することが報告されています。要介護高齢者が100万人増えるだけで、年間2兆円の介護費用と1兆円の医療費が増加することも紹介され、40歳以上の人々が負担している介護医療費が年間数万円高くなる可能性があると指摘されています。また、運転をやめて交通機関を利用する人でも、要介護認定のリスクは1.69倍に抑えられるものの、依然として高い数値となっています。

和田先生は、高齢者のみが危険だとするのは差別ではないかと述べ、高齢者の運転はスピードを出さないため事故の確率が低いという主張もされていました。確かに「高齢者だからリスクが高い」というステレオタイプな見方は危険ですが、事故を起こせば巻き込まれる側も巻き込んだ側も不幸になるため、運転者一人ひとりが真剣に自分はどうするか、ということを判断し、行動する必要があると感じました。

運転免許を返納するか更新するか選択する図

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