第8回:「運転能力を客観的に証明する方法」⑦自己管理の仕組み:運転日誌の記録

運転日誌のイメージ図

学生時代、私はグライダーに乗る大学の運動部に所属していました。その頃は「フライト日誌」をつける習慣がありました。フライトごとに、どのルートを飛び、どんなミスをしたのかなどを記録して振り返っていました。記録することで自分の技術を向上させることが主な目的でしたが、当時はそれを当然のこととして受け入れていました。

一般に日誌というものは、自由に書いていいと言われますが、かえって何を書けばいいのかわからず手が止まる、そして長続きしない、そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。しかし、フライト日誌のように「どこを飛び、何を感じたか」といった記入すべき一種の「課題」のようなものが与えられていると、自然と頭が働き、書くという作業が続けられるものです。このような工夫をしながら記録を残すことは、単なる振り返りを超えた有意義な経験となります。これが、フライト日誌を通じて得られた一つの学びでした。

このブログでご紹介する運転日誌をつけることは、高齢ドライバーが運転を継続するために必要不可欠なツールです。なぜなら、どんなに口頭で「安全に運転している」と説明しても、それを証明する客観的な材料がなければ家族や周囲は納得しにくいからです。運転日誌に記録を残しておくことで、日々の運転状況や注意点、反省点などが可視化されます。これにより、自分の運転を振り返るだけでなく、家族に運転の現状を説明する材料にもなり、家族との信頼関係を築く一助になります。

また、記録をつける行為そのものが、運転の改善につながるだけでなく、高齢ドライバーの脳を活性化させる効果も期待できます。運転を続けるためには、運転技術や判断力を維持するだけでなく、「私はこういう形で安全運転をしている」という事実を示す必要があります。運転日誌は、その証明となる記録なのです。言い換えれば、運転継続を希望するなら、運転日誌をつけることがある意味での「必須条件」と言えるでしょう。

運転日誌を付けるべき論拠

1. 自己認識を深める効果

運転日誌をつけることで、自分の運転癖や改善点に気付くことができます。例えば、「急ブレーキが多い」など、無意識に行っていた行動が記録を通じて意識に上り、改善につながります。

2. 家族との信頼構築

運転日誌を共有することで、家族がドライバーの状況を把握しやすくなります。不安を抱える家族も、具体的な記録を見ることで納得感を得られ、建設的な会話が生まれます。

3. 安全意識の向上

ヒヤリハットを記録することで、危険な状況をより明確に認識できるようになります。これにより、無意識的な運転から注意深い運転へのシフトが期待できます。

運転記録を残すための具体例

Microsoft Officeがある場合

Excelで運転日誌をつける場合
表形式で記録を残すのが便利です。使用例としては、走行距離や道路状況、反省点などを列として設定し、運転内容を整理します。家族と共有する際は、Excelファイルをメールに添付して送るだけでOKです。

Wordで運転日誌をつける場合
フリーフォーマットで文章を書きながら記録を残します。運転中に感じたことや反省点を日記のように記録し、必要に応じて印刷したりメールで共有できます。

スマホで記録する場合

メモアプリを使う
iPhoneなら「メモ」、Androidなら「Google Keep」などを使い、運転後に「日時」「距離」「気付いた点」「楽しかったこと」を記録します。家族と共有する際は、メモの内容をコピーしてLINEやメールで送信できます。

LINEで直接記録する
家族とLINEでやり取りしている場合、自分専用のグループを作って日誌として利用する方法もあります。運転内容をLINEに投稿し、家族がリアルタイムで確認できるようにします。

Googleのサービスを使う場合

Google スプレッドシート
表形式で記録を整理し、日付、時間、距離、反省点、楽しい発見を項目に設定できます。共有リンクを送ることで家族もリアルタイムで確認可能です。

Google ドキュメント
フリーテキスト形式で日記のように記録を残します。リンクを共有して共同編集も可能です。

ノート等に記録して残す場合

ノートや手帳を使って運転日誌をつける方法は、特別なツールが不要で、すぐに始められる点が魅力です。デジタルが苦手な方にもおすすめの方法です。シンプルに以下のような内容を記録するとよいでしょう。

基本情報
運転した日付、時間、走行距離を記録します。
例:「2025年1月4日、9:00~10:00」「片道5km、自宅からスーパーまで」

気付いたこと
運転中に感じたことや反省点を書き留めます。
例:「右折時のタイミングが遅かった」「信号待ちで余裕を持てた」

発見や感想
楽しかったことや気付きを書くことで、記録がポジティブな体験になります。
例:「新しいカフェを見つけた」「道沿いの景色が素晴らしかった」

ノートの場合は、運転内容の詳細よりも、簡潔に重要なポイントだけを記録することで、無理なく続けられます。色ペンや付箋を使うと、見返したときに楽しく、整理もしやすくなります。

運転記録を楽しくする工夫

「楽しかったこと」を記録

例:「初めて通った道の景色が綺麗だった」「面白いお店を発見した」など、運転中に感じた良い出来事も記録することで、記録する行為自体が楽しみになります。

家族とのポジティブな会話を生む記録

家族に見せたとき、「これ良かったね!」と話が弾むような内容を記録に盛り込みます。例えば、子供や孫の写真を添えて「ここに一緒に行った」と記録するのも効果的です。

運転日誌のメリットとデメリット

メリット

  1. 自己管理ができる
    運転日誌をつけることで、自分の運転状況を客観的に振り返り、改善のきっかけを得られます。
  2. 家族との信頼を深める
    記録を共有することで家族が安心し、具体的なアドバイスをもらえます。
  3. 楽しみながら続けられる
    「楽しい発見」や「景色の変化」を記録することで、義務感が軽減されます。

デメリット

  1. 記録の手間がかかる
    毎回記録をつける習慣を作るまでに少し時間がかかることがあります。
  2. 主観的な記録になりやすい
    自分の視点だけで記録が偏る可能性があります。
  3. 信頼性の限界
    記録が必ずしも安全運転の保証とはならない点に注意が必要です。

まとめ

運転日誌は、運転状況を把握し、家族との信頼を築くための有効な手段です。それだけでなく、「楽しい発見」や「今日の気づき」を記録することで、日誌を書く行為そのものを楽しみに変えることができます。また、日誌は過去の記録ですが、未来に向けた目標みたいなものを書き留めておくことも有効かもしれません。

家族との共有は単なる報告ではなく、コミュニケーションの場を作ります。「こんなことがあったよ」と話し合うことで、記録する側も受け取る側も笑顔になれる運転日誌を目指してみてください。

次回は、「⑧運転継続計画(DCP)の策定」について詳しく解説します。お楽しみに!

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