神様に与えられた”試練”を”楽しむ”?!高齢ドライバーと家族の対話 その「能動的アプローチ」

最近、実家に住む母との会話が減っていることに気づきました。そして、会うたびに喧嘩になってしまうことが多く、この状況を改善したいと思い、いくつかの本を読んで学びました。その中で、高齢ドライバーと家族の間で起こりがちな免許返納問題について、建設的な対話を進めるためのヒントになりそうな考え方が紹介されていて、とても印象に残りました。
この問題に関して、双方が取るべき行動があるのではないかと考え、2回シリーズで考えてみることにしました。1回目の今回は、相手に対して取るべき「能動的姿勢」について、2回目は「受動的姿勢」について考えてみたいと思います。
高齢ドライバーが家族に対して取るべき能動的姿勢
高齢ドライバーの方々は、家族との対話において以下のような姿勢を心がけることが大切ではないでしょうか。
まず、自身の運転能力を客観的に評価する姿勢を示すことが重要です。例えば、運転中の小さな変化(ウインカーの出し忘れなど)を記録し、自身の運転能力を振り返る機会を作ることができます。これは、自己評価の客観性を高める効果があります。日本の精神科医、作家、教育評論家として広く知られている和田秀樹氏は「自己評価には客観的な指標が必要」と述べており、家族や友人からのフィードバックを積極的に受ける姿勢も重要な要素となります。
次に、家族の心配や懸念を軽視せず、真摯に耳を傾けることが大切です。ここで活用できるのが「フィーリング・グッド効果」です。これは、良い気分や環境が認知や行動にポジティブな影響を与える心理現象のことです。例えば、食事後などリラックスした状態で話し合いの時間を自らが設けることで、高齢ドライバーのペースで聴く姿勢が整い、より建設的な対話が可能になります。
また、免許返納後の生活の変化について具体的にイメージし、家族と意見や感想等を共有することも重要です。移動手段は距離の長短に関わらずいつも車、というときでも、たまには気分を変えて、試験的に公共交通機関を利用する日を設けるなど、実際の利便性を体験してみるのも良いのではないでしょうか。
さらに、プライドを保ちつつも、安全性を最優先に考えることが大切です。高齢者の事故事例を家族と一緒に学び、自身の状況と照らし合わせることで、客観的な判断ができるようになります。失敗学の権威として知られる工学博士で、東京大学名誉教授である畑村洋太郎氏は「失敗から学ぶことの重要性」を強調しています。他者の経験や失敗から学ぶことで、自身の安全運転に活かすことができます。
最後に、段階的な運転制限を自ら検討し、徐々に変化に適応する姿勢も有効だと思います。例えば、夜間や長距離運転を控えるなど、段階的な制限から始めることで、急激な生活の変化を無理に強いられることを避けることができます。
家族が高齢ドライバーに対して取るべき能動的姿勢
一方、家族の側も高齢ドライバーとの対話において、以下のような姿勢を心がけることが大切です。
まず、高齢者の自尊心を尊重することが重要です。「あなたの運転技術を信頼している」と伝えた上で、心配している理由を具体的に説明するアプローチが効果的です。訪問看護・リハビリ・デイサービスを提供する企業の創業者で、25年間で18万人以上の患者を診察した経験を持つ萩原礼紀(はぎわら れいき)氏は「相手の立場に立った言葉選びの重要性」を指摘しています。慎重に言葉を選ぶことで、高齢ドライバーの理解を得やすくなります。
次に、具体的な代替案を提示することが大切です。公共交通機関の利用ガイドを作成したり、家族での送迎スケジュールを提案したりするなど、実践的なアプローチが求められます。和田秀樹氏は「具体的な行動計画の重要性」を強調しており、これらの具体的な提案は高齢ドライバーの不安を軽減する効果があります。
また、段階的なアプローチを提案することも有効です。即時の返納ではなく、段階的な変化を提案するなど、長期的な視点で考えることが大切です。
さらに、第三者の意見を活用することも検討しましょう。高齢者の友人や信頼する第三者(かかりつけ医など)に協力を求め、客観的な意見を伝えてもらうことも効果的です。
最後に、家族全体の問題として捉えることが重要です。自身の将来の返納計画も示すなど、家族全体の問題として捉える姿勢を見せることで、高齢ドライバーの理解を得やすくなります。畑村洋太郎氏は「共感的理解の重要性」を指摘しており、家族全体で取り組む姿勢が重要だと思います。
まとめ
今回は高齢ドライバーとその家族が免許返納問題に対してどのように振舞えばいいか、ということを能動的活動として考えてみました。一般に「能動的行動」というものは時として攻撃的になりがちです。だから、より一層相手の立場に立って、慎重に言葉を選ぶことが大切です。そして、建設的な対話を心がけ、お互いの理解を深められればと思います。
次回はこの問題を「受動的立場」から、アプローチする方法を考えてみたいと思います。
これを機に、私自身も久しぶりに実家の母に連絡を取ってみようと思います。