東北自動車道で発生した逆走事故の原因に大胆な”仮説”を立て、再発防止に向けた提言を考察

カーナビの画面イメージ図

先日のブログに引き続き、東北自動車道で発生した逆走事故について、改めて考察してみたいと思います。

今回の事故は、2025年4月26日午後10時頃、栃木県那須塩原市の東北自動車道上り線で発生しました。報道によると、逆走した乗用車がまず走行中の車両と接触した後、およそ3キロメートルもの間逆走を続け、対向車と正面衝突するという悲劇的な結末を迎えました。この事故で亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、負傷された方々の一日も早い回復を願うばかりです。

この悲劇的な事故の背景には、一体どのような要因が潜んでいたのでしょうか。以下に、あくまで独断と偏見に基づいたものとなりますが、事故のメカニズムや原因について、いくつかの仮説を提示し、それらを踏まえた今後の対応等について考察してみたいと思います。

逆走事故を引き起こした3つの仮説

仮説①:カーナビ過信による運転の質の低下
まず、今回の事故の遠因として考えたのは、カーナビ過信による運転の質の低下です。先日のブログでも触れましたが、今回の事故を起こされたドライバーの方は、本来下り方面(左手方向)へ向かう意図があったにも関わらず、料金所通過後の分岐点で誤って上り方面(右手方向)に進んでしまったのでは、との見方があります。その後、その先の信号機のあるT字路で右折しかできないにも関わらず、左折することでミスを取り返せるのでは、と思い込み、そこから逆走を始めてしまったのではないか。もちろん、当時の運転状況は一切不明ですが、もしこの推測が正しければ、根底にはカーナビに頼りすぎるあまり、自分が進むべき方向に対する能動的な意思や戦略がないまま、「カーナビが示すままに受動的な運転する」という姿勢があったことが原因かもしれません。これがなければ、T字路手前の分岐点で誤った方向に進むこともなく、この事故は防げたのではないか、と思います。

仮説②:地図データの不備とカーナビの不確実性
次に考えられるのは、地図データの不備とカーナビの不確実性です。事故現場となった黒磯板室インターチェンジは、2009年3月29日に供用を開始した比較的新しいインターチェンジです。15年以上経過しているとはいえ、カーナビの地図データの更新頻度によっては、情報が古くなっている可能性も否定できません。カーナビに過度に依存している場合、比較的新しい道路や関連施設などが地図データに反映されておらず、画面表示や音声案内による適切な誘導が行われなかったために、ドライバーが誤った方向に進んでしまうことも考えられます。私自身も過去に、地図データが古いためにカーナビには道路表示のない畑や田んぼの中を走行して、適切な案内が受けられなかったり、あるいは新しい道路が開通しているにも関わらず、旧道を経由する遠回りのルートを案内された経験が何度かあります。

仮説③:親切なリカバリールート提案機能が裏目
そして、親切なリカバリールート提案機能の裏目も考えられます。現代のカーナビは非常に高性能で、目的地への案内ルートを外れた場合でも、すぐに別のルートを提案してくれる親切な機能が搭載されています。例えば、本来左折すべき交差点を直進してしまった場合、次の左折可能なポイントを速やかに提示し、ドライバーにその行動を促します。今回のケースに当てはめて考えると、分岐点で左手方向に行くべきところを誤って右手方向に進んでしまったドライバーさんに対して、”カーナビが今回そのような案内をしたかは不明ですが”、ドライバー自身が「次の機会に左折すれば良い」と安易に考え、実際にT字路で左折という誤った行動に出てしまった可能性も否定できません。

再発防止に向けた提言

では、これらの仮説を受けて、今回のような事故を二度と繰り返さないためには、どのような対策を講じるべきでしょうか。

前もって申し上げておくと、私は決して「今さらカーナビを使うな」と言いたいわけではありません。カーナビは、私たちの移動を非常に便利にしてくれる素晴らしいツールで、運転をする際に欠かせないものです。その活用を否定するつもりは毛頭ありません。

しかし、特に見知らぬ土地へ車で出かける際には、カーナビの情報に全面的に頼るのではなく、地図などのアナログな情報源も併用し、ポイントとなる場所(主要な交差点名など)を事前に確認する習慣を持つことが重要ではないでしょうか。つまり、カーナビに主導権を取られ、人間が受動的に車を運転するのではなく、あくまで人間主導で車を運転し、カーナビはそのサポートをする、と考えるのです。

カーナビがない時代から運転をしていた経験からすると、見知らぬ土地へ行く際は、事前に地図を見てルートを大まかに把握し、重要な交差点でどのような操作をするか、ということを頭に入れていました。全ての経路を詳細に記憶することは難しいかもしれませんが、目指すべき方向や主要なポイントだけでも意識しておくだけで、カーナビがなかった時代でも、確実に目的地に辿り着くことができたと感じています。

それから、地図情報は常に最新の状態に保つことが理想ですが、そのコストを考えると、全ての方が容易に対応できるわけではないという現実もあります。そのような状況においては、スマートフォンのナビゲーションアプリを活用するのも有効な手段かもしれません。スマホの地図アプリは、最新の道路情報にも迅速にアップデートされる傾向があるため、カーナビと併用することで、より安全な移動に繋がる可能性があります。

そして、現代社会は挑戦と失敗からの学びを推奨する風潮があります。高速道路における逆走は、その「やり直し」に非常に大きな時間ロスという代償を伴いますが、リカバリーはできるということを改めて認識する必要があります。誤った方向に進んでしまった場合は、最寄りのインターチェンジまで一旦進み、そこで正しい方向へ転換するという、ルールに則った安全な方法を選択することを徹底し、実行することが何よりも重要です。

ドライバーの意識と安全な交通に向けて

今回の事故で、逆走されたドライバーご本人が亡くなられているため、事故の真相がすべて明らかになるかどうかは分かりません。しかし、過去の多くの逆走事故の事例を踏まえ、関係各位が様々な対策を講じてきたことは想像に難くありません。今回の悲劇的な事故は、依然として逆走を完全に防ぐことが難しい現状を示唆しており、更なる対策の必要性を痛感させられます。便利なカーナビがある現代においても、私たちドライバー一人ひとりの注意と意識によって防げる事故が数多く存在するということを改めて胸に刻み、日々の運転に臨んでいきたいと思います。

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