「今のクルマに乗り続けたい」高齢ドライバーのそんな願いを叶える意外な技術の使い方

先日のブログで取り上げたマツダのSeDVは私にとって非常に印象的でした。しかし、よく考えてみると、この恩恵を受けるには新車を購入する必要があります。車好きの中には新車を好む人もいる一方で、愛車に長く乗り続けたいという人も少なくありません。その後者のニーズに応えられる選択肢があってもよいのではないか。そう考えたことが、今回の考察の出発点になりました。
アクセルとブレーキの踏み間違いへの対策
高齢ドライバーによる池袋での事故や鹿児島の事故でも、加害者が事故の原因として「アクセルとブレーキの踏み間違え」を挙げています。この問題に対処することは喫緊の課題です。
世の中には、踏み間違いを防ぐための様々な製品が各社から提供されています。例えば、
- 急発進防止装置 (YelloeHat)
- ペダル踏み間違い防止装置 (NGKスパークプラグ/ NTKテクニカルセラミックス)
これらの技術の多くは「足を使う」という前提で設計されています。一方で、人間の身体機能は足から衰えていく傾向があるというデータもあります(参考:国立長寿医療研究センター)。
そこで、もし手で操作する運転方式を採用すれば、足の衰えによる運転不能のリスクを軽減できる可能性があります。新車を買う資金はないが、多少お金をかけても長く運転を続けたいと考える高齢ドライバーにとって、この選択肢は有効かもしれません。ここで、もしかしたら、福祉用に開発された技術が応用できるのではないかと考えました。
福祉用の技術活用に関する考察
今回の考察では、福祉用の技術を高齢ドライバーに応用する際の実現可能性を3つの観点から整理します。
1. 高齢ドライバーが福祉用車両オプションを利用する際の規制
手動運転補助装置は本来、障がいを持つ方が運転できるようにするためのものであり、高齢ドライバーが使用することに法的な問題がないのかが気になる点です。現在のところ、高齢ドライバーが福祉用の車両のオプションを使用すること自体を規制する法律等は確認されませんでした。
2. 後付け改造の可否と実施可能な場所
車の改造が可能かどうか、どのような費用がかかるのかも重要なポイントです。手動運転補助装置の後付け改造は、多くの車種で可能とされていますが、適合する装置は限られています。改造を行うには、専門の業者に依頼する必要があり、以下のような選択肢があります。
一部の製品については公式サイト上で価格情報を確認することができませんでした。なお、価格は車種や仕様、取付工賃などによって変動する可能性があり、現在の価格とは異なる場合もあります。詳細は各メーカーや販売店に直接お問い合わせください。
3. 導入に伴う懸念点
手動運転補助装置を導入することで、どのような懸念があるのかも考慮しなければなりません。
- 操作の習熟度:
長年ペダル操作に慣れてきた高齢ドライバーが、手動操作に適応するには時間がかかる可能性があります。 - 車検時の審査基準の違い:
同じ改造でも、車検場ごとの対応が異なる場合があります。過去には、ある車検場では問題なく通過したものの、別の車検場では追加書類を求められたケースが報告されています(参考:グーネット買取ラボ)。 - 安全性と保険の適用:改造後の車両が安全基準を満たしているか、または保険適用の条件が変わる可能性があるため、事前確認が必要です(参考:保険スクエアbang!)。
- 家族の利用制限:手動運転補助装置を取り付けると、通常のペダル操作ができなくなる場合があり、家族が運転できなくなる可能性があります。そのため、高齢ドライバー本人が運転することが前提の車両となり、家族と車を共有する場合には不便が生じる可能性があります。
最後に
今回の考察では、福祉用の技術を高齢ドライバー向けに応用する可能性を考察しました。
世の中には、当初の狙いとは異なる形で大ヒットした例もあります。例えば、
- ポストイット(強力な接着剤を開発する過程で生まれた弱い接着剤が付箋として大ヒット) (毎日が発見ネット)
- 電子レンジ(レーダー装置の研究中に偶然発見されたマイクロ波の加熱効果が家庭用調理器具として普及) (ニッポン放送)
今回の提案も、意外な形で、福祉用に開発された製品が、高齢ドライバー用として受け入れられる可能性があるのではないでしょうか。もちろん、費用等の面でクリアすべき点はありますが、「問題を前にして諦めるのではなく、前に進む」という姿勢が重要だと考えます。
技術の応用によって、新しい選択肢が生まれることを期待したいところです。