自動運転は、私たちの未来をどう変える? 免許返納とセットで議論されがちな技術の最新動向

高齢ドライバーによる事故の問題を議論すると決まって「自動運転技術が進めば、運転に不安を感じる高齢ドライバーもその家族もこの問題が解消できる」という期待の声が上ります。先日自治体向けの展示会で自動運転に関するブースを訪れた際、まさにその期待に応えるような展示が数多くありました。

しかし、この自動運転技術が「すぐに」「全国の」高齢ドライバーの問題を解決してくれるか、というと、まだまだ時間がかかりそう、ということでした。

担当者の方曰く、自動運転が最初に普及するのは公共交通機関のような限定的な使い方からで、一般の自家用車に広く普及するのは、今の見通しで2030年代以降になるだろうとのこと。その理由としては、まだシステムが高価でしかも場所を取り(大きい)、そして何よりも技術的な進歩は著しいものの、法整備等クリアすべき問題の解決が追いついていない点もボトルネックになる可能性があると聞きました。

もちろん、アメリカや中国では無人運転のタクシー導入が進んでおり、それらを参考に日本でも課題等の整理をしていくことになると思いますが「国民性の違い」という考慮すべき難題もここに絡んでくるらしく、一概にはどうなるかは何とも言えない、というのが現状のようです。

ですが、今後の期待大の「自動運転」とはどのようなもので、私たちにどう関わってくるのか、考えてみたいと思います。

「自動運転」ってどんなもの? ~運転支援と自動運転の違い~

「自動運転」に類似する言葉で「運転支援」というのがあります。混同しやすいので、両者の違いを確認しておきましょう。

  • 運転支援
    アクセルやブレーキ、ハンドルの操作をドライバーが主導し、システムが補助するものです。現在、多くの新車に搭載されているのはこのレベルです。(例:自動ブレーキ、車線維持支援など)
  • 自動運転
    特定の条件下で、車のシステムが運転の全てを代行するものです。ドライバーは基本的に運転操作に関わりません。

そして、自動運転を5つの「レベル」で区別している、とのことです。現在、一般の車で普及しているのは、運転支援のレベル1や2だそうです。

いま、どこまで進んでいるの? ~レベルごとの現状とこれから~

レベルの話が出たので、一応レベル分けの考え方も確認しておきたいと思います。

  • レベル1・2(運転支援)
    現在、市販車に広く搭載されており、高速道路での追従走行や車線維持などが可能です。あくまで運転の主体はドライバーです。
  • レベル3(条件付き自動運転)
    特定の高速道路上など、決められた条件下でのみシステムが運転を代行します。ただし、緊急時にはドライバーがすぐに対応する必要があります。日本でも一部の車種で導入が始まっていますが、まだごく限られています。
  • レベル4(特定条件下での完全自動運転)
    限定されたエリアやルートで、システムが全ての運転操作を行い、ドライバーは運転に関与しません。万が一の時も、システムが安全に停止します。日本でも、すでに特定の地域で無人バスの運行が始まっていますが、これは特定のルートでのみ利用できるサービスです。政府は2025年を目途に、全国40か所でこのレベル4のサービスを展開することを目指しています。
  • レベル5(完全自動運転)
    どんな場所でも、どんな状況でも、システムが完全に運転を代行する究極の自動運転です。これはまだ研究開発の段階で、実現には相当の時間がかかると言われています。

自家用車への普及はいつ?~期待と現実のギャップ~

先の展示会では自動運転技術は着実に進化していることを実感しましたが、それが自家用車としていつでもどこでも使えるようになるには、まだ時間がかかる、とのことです。

現在、導入が進んでいるのは、人手不足の解消や公共交通機関の維持といった目的で、ルートやエリアが限定された利用が主のようです。一般の自家用車に、運転者がいなくても安心できるレベル4以上の自動運転が搭載され、広く普及するには、まだ10年位はかかりそうという見方が現実的、とのことでした。

自動運転の「壁」~技術以外の課題~

なお、自動運転の普及に時間がかかるのは、技術の問題だけではない、とのことです。

  • 法整備の遅れ
    万が一事故が起きた場合、誰が責任を負うのか(システム開発者、車の所有者、あるいは他に責任者がいるのか)といった法的なルールがまだ明確ではありません。この点が曖昧なままでは、自動車メーカーも本格的な普及に踏み切りにくい、とのことです。
  • コストの高さ
    現在の自動運転システムは非常に高価です。一般の人が手軽に購入できるようになるには、さらなる技術革新と量産効果が必要、とのことです(現状では導入に際して車本体価格の2~40倍のコストが別途かかる、との話でした)。
  • 技術的な難しさ
    豪雨や濃霧、積雪といった悪天候、あるいは子供の飛び出しや自転車の予期せぬ動きなど、予測不能な状況への対応は、AIにとっても非常に難しい課題、とのことです。

今、私たちができること

自動運転技術は、私たちの移動の未来を大きく変える可能性を秘めています。しかし、高齢ドライバーの皆さんが抱える「運転の不安」や「免許返納」といった現在の課題を、自動運転がすぐに解決してくれるわけではない、というのが現状のようです。

一般の自家用車に、運転手がいなくても安心して移動できるような自動運転が広く普及するには、まだ多くの課題があり、相応の時間がかかります。それでも、公共交通機関に自動運転技術が導入されれば、人手不足等で移動手段の利用機会が限られる、という状況を脱することができます。

それまでは、「自動運転がそのうち来るから大丈夫」と過度に期待するのではなく、運転を続けるのか、免許を返納するのか、という「大方針」を家族と決定し、その方針に従って必要な行動を始めることが大切です。

自動運転の明るい未来を見据えつつも、今できる最善の選択をすることが、安心で安全な生活を送るための第一歩となるのではないでしょうか。

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