「予期後悔」という考え方と「3Dカード」のコラボが交通事故防止の最強の武器になる!

「もっと早く準備をしていれば…」「あのとき無理をしなければ…」
人生には「後悔」がつきものですが、心理学ではこのネガティブな感情を「後悔を先に済ませて大事に至らないようにする」とする考え方があるそうです。それが「予期後悔(Anticipated Regret)」という考え方です。つまり、決定を下す前に、「もしこの選択をして、最悪の結果になったら、どれだけ後悔するだろうか」をあらかじめ想像し、適切に対処する。この後悔の感情こそが、人間がより慎重で適応的な意思決定をするための強力な動機付けとなります。

この考え方は、上市秀雄氏の著書『後悔を活かす心理学』で詳しく解説されており、後悔の回避が私たちを適切な行動を導くという心理学的原理として、広く紹介されています。

この理論は、私たちの「運転」という行為にも深く当てはまります。特に高齢ドライバーの安全運転において、「事故を防ぐ」という意思決定を自発的に促す上で、この予期後悔の概念は非常に有効なアプローチとなると思われます。

「漠然とした目標」では予期後悔の効果は生まれない?

高齢ドライバーにとって、運転における「後悔」とは、何を指すのでしょうか?

一般に多くのドライバーは「自分の運転に文句を付けられると気分が悪くなる人が多い」と言われています。これは、誰もが何かしらの形で運転に関する内面的な目的や目標を持っていて、それに反することを言われたからだと考えています。その内容は人それぞれだと思いますが、もしそれらの達成を阻害するような事態を引き起こしてしまったとき、何らかの後悔の気持ちを抱く、と考えることができると思います。たとえば、高齢ドライバーが運転するたびに事故を起こさないように気を付けて運転しよう、と日頃から目標として考えている場合、実際に小さな接触事故を起きてしてしまった、というような状況が後悔の例として考えられると思います。

しかし、運転に関する目的や目標は一般に漠然としていると考えられます。なぜなら、運転の目的は通常「移動するための手段」であり、手段そのものに具体的な目標や価値を考える機会がないので、具体的に考えたことがないからです。ですから事故を起こしても、それが大きな事故なら、後悔の念を抱きますが、小さな事故だったので後悔していない、と都合よく解釈し、せっかくの予期後悔の考え方が発揮されない可能性があるのではないか、と考えています。

つまり、このような漠然とした目的や目標を持っている状況で予期後悔を考えても、その効果は「想定通り」とはならない可能性があるのではないでしょうか。しかし、この「予期後悔」という考え方は非常に有効な考え方だと思いますので、できればこの効果を最大化したいと考えます。そのためには、後悔の対象となる目的や目標を漠然とした状態ではなく、事前にその内容を具体的にしておくこと、一種の「明文化」が不可欠だと考えています。そのためには、目的や目標について「後悔する、しないの判断をする程度や範囲」を個々人が明確化し、それにより後悔を避けるために「実施する対処内容」がより具体化できると考えるからです。

それはちょうど、「カロリー摂取」という漠然とした目標を「今日の昼食はタンパク質20g、脂質5g以下」という具体的な数値目標にすることで、毎回の食事で何を食べるべきかという行動選択が明確になるのと同じ理屈です。

この目的の具体化こそが、予期後悔という理論を現場で応用する上での鍵を握ると考えますが、前出の書籍では、この「漠然とした目標の具体化」についてはあまり触れられていないように思えます。しかし、私たちはこの「目的の具体化」こそが、予期後悔の効果を最大限に引き出すために不可欠と考えていますそして、この具体化を実現するために、私たちの「3Dカード」と予期後悔という考え方がコラボレーションすることで、より高い効果を生むことができるのではないか、と考えています。

予期後悔の「前工程」としての3Dカードの役割

私たちが開発した「3Dカード(Driver’s Desire Discover Card)」を予期後悔の効果を最大化するために、予期後悔を考える一連のプロセスに組み込めないか、と考えています。

3Dカードが果たす「後悔の基準点」設定の役割

3Dカードは、以下のメカニズムで予期後悔の効果を最大化します。

  1. 目的の具体化:
    漠然としていた「運転を続ける目的」や「こうありたい」という内面的な目標を、カードの「究極の選択」プロセスを通じて具体的かつ明確に掘り起こし、言語化します。
  2. 基準点の設定:
    この明確化された目的こそが、予期後悔の際に想像すべき「失いたくない未来」という「後悔の基準点」となります。
  3. 強い動機付け:
    3Dカードで目的を定義した後に予測される後悔の感情を想像すると、最悪の結果になったときに具体的で強い後悔に直結し、予期後悔の効果を最大化します。

私たちは、予期後悔の有効性を解説する上市先生のお考え方にヒントを得て、そこに「予期後悔をしないため対処を考える具体的な目的設定ツールとして「3Dカード」とコラボして使用することで、益々予期後悔という考え方を後押しし、より安全なクルマ社会の貢献に役立つお手伝いができる、と考えています。

最強の武器「鬼に金棒」へ。理論と実践の協働が生む未来

予期後悔は、リスク回避の意思決定を導くための「思考の地図」を提供してくれます。しかし、その地図上で高齢ドライバー自身が「どこに向かいたいのか」という目的地が明確でなければ、有効な動機付けにはなかなかなれない、と考えています。私たちの「3Dカード」は、その目的地を意思決定するためのお手伝いができると考えています。

「予期後悔」という有効な心理学的理論と、個人の内面的な動機付けを具体化する「3Dカード」というツールの組み合わせは、まさに鬼に金棒だと考えます。

どちらも、最終的に「不幸な交通事故を減らす」という共通のゴールを目指して考えられたものです。この理論と実践が手を組むことで、従来の技術的な対策や規制だけでは解決が難しかった「ドライバーの自発的な行動変容」という最も困難な課題に、強力な一手を打つことができると考えています。

この「予期後悔×3Dカード」という新たな施策が、より現実的なものとなり、社会から不幸な交通事故を減らすことに貢献できないか、これからも様々な人たちと議論をしていきたいと思います。

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