英語三文字アレルギーの私が、なぜ「DCP」という名称を使って事業を行っているのか?

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会社員時代、私を最も悩ませたものの一つ。それは「英語三文字の言葉(略称)」がなかなか覚えられないことでした。

当時の職場は、仕事の内容ごとに組織が分かれており、その組織にどっぷりと浸かると、自分の専門性を誇示するかのように、組織名を冠して「自分は〇〇屋だ」と自称する独特の文化がありました。当時私がどっぷりと浸かっていた組織は、普段から英語三文字でモノを表現する文化が少なく、どちらかと言うと長い名称を無理やり短縮して呼ぶ日本語のコミュニケーションを好んでいました。

ところが、別の組織の「〇〇屋」のテリトリーに足を踏み入れると、そこでは異様なやりとりが繰り広げられていたのです。「〇〇〇(英語三文字)が壊れたから、□□□(違う英語三文字)に取りかえよう。ついでに△△△(これも違う英語三文字)も確認しといて」

同じ会社に籍を置き、同じ日本語を話しているはずなのに、門外漢の私からすると、そこはもはや日本ではないどこか別の国の作業現場に迷い込んだような錯覚すら覚えました。 言葉は本来、進むべき道を示す存在であるはずなのに、その英語三文字の暗号は、私を「一寸先は闇」の世界に置き去りにされたように感じられたのです。

こうした経験が、私の中に一種の「英語三文字アレルギー」を植え付けました。知らない言葉で置いてけぼりにされる疎外感。私は心に固く誓ったのです。「いつか自分が何かの命名権を持つ立場になったら、絶対に相手を困らせるような不親切なことはしない」と。

「伝わる」ための葛藤と、四文字目の祈り

しかし、人生とは皮肉なものです。2024年5月に起業するためにいざ準備をしようとしたとき、最初に直面したのは「屋号をどうするか」という問題でした。

会社員時代の会社名は、正式には漢字だらけの重厚な名称でしたが、通称は誰もが知る「英語三文字」でした。昨今では英語のみの社名も一般的になりましたが、漠然と私もその流れに乗りたいなあ位に考えていて、迷うことなく英語三文字の名称を選んでいました。 「あれほどアレルギーがあったのに、結局英語三文字にするのか?」 私の愚痴を長年聞いてきた友人たちは、きっと呆れたことでしょう。

しかし、これには切実な体験談があるのです。自分の苗字である「宮脇」を電話口で伝えるのは、実は至難の業なのです。「みやわきです ミ・ヤ・ワ・キ」と説明しても、なかなか一発では伝わらない。一方で、数字やアルファベットは、音声として比較的電話の相手に伝わりやすいという事実を何度も思い知りました。そこで、屋号を考える際は、聞き取る相手の負担を減らすものであるべきだ、と考えを改めたのです。

そこで私は、過去の苦い経験を曲げてでも「英語」を選択することにしました。目指したのは、どこでも使われていない「オンリーワンの英語三文字」です。しかし、世の中の三文字の組み合わせは、既にどこかの誰かが使っている現実を知りました。

そして「名は体を表す」という観点から、私が業務としてやりたいと考えていた「ドライバーの安全運転支援」を表す言葉の頭文字を並べてみました。しかし、ようやく辿り着いた三文字も、既存の強力なブランドに使用され、その影響力に到底太刀打ちできないことが判明したのです。

結局、私は「英語三文字」の屋号をあきらめ、一文字を加えて四文字にすることで比較的独自性を確保する、という選択をしました。それが現在の屋号「DSSJ(Driver Support Seminar Japan)」です。自らの英語三文字アレルギーを乗り越え、実用性と独自性の間で葛藤した末の、相手へ確実に「届ける」ための矛盾に満ちた一歩でした。

「計画」から「指針」へ

事業をスタートさせて、早い段階で世に送り出した言葉が「DCP」でした。 これは、災害対策の世界で知られる「BCP(Business Continuity Plan 事業継続計画)」の最初のBを、DrivingのDに変えた造語です。英語三文字は苦手な私ですが、知名度の高い言葉を「改造」したものであれば、人々の知識との親和性が高く、認知もされやすいだろうと考えたのです。

実際、説明の際に「BCPのBを、運転のDに変えたんです」と言うと、BCPという言葉を知る多くの方が「なるほどね!」と興味を持ってくださいます。 しかし、運用を続けるうちに、一つの壁にぶつかりました。DCPの「P」、すなわち「Plan(計画)」という言葉の想像以上の「重み」を持つことでした。

「計画」という言葉は、思ったよりも格式が高く、敷居が高い。 多くの人にとって「計画」という言葉を聞くと「事業計画」を思い浮かべる方も多く、論理整然とデータが並び、高い目標数値を課され、今以上に頑張らなければ達成できない「しんどいもの」というイメージがあるようです。そんな分厚いファイルを作成しろ、ということなら、誰だって拒否反応を示すでしょう。それはまるで、決められた「レール」の上を、がむしゃらに走らなければならない強制力のようなものを感じます。

「本当に、高齢ドライバーに必要なのはそのような計画なのだろうか?」 と考えました。その結果、これは会社のノルマではない。好きな運転を続けるために、衰えゆく身体機能に抗って運動したり、時間帯や天候を選んだり、専門家のチェックを受けたりする一連の「前向きな活動」のはず、との考えに至りました。

そこで、DCPというワードは維持しつつ。Planに代わるPで始まる別の単語を探し、辿り着いたのが「Paper(ペーパー)」でした。 Business Continuity Plan を Driving Continuity Paper へ。 日本語訳も「運転継続計画」から「運転継続指針」へと改めました。

ここで言う「指針」とは、もともと「方位磁石の針」のことです。「一寸先は闇」になって先が見えなくなったとき、あるいは「これからも運転を続けたい」と考えたとき。そんなときに、そっとポケットから取り出して、自分が進むべき方角(やるべきこと)を確認できる「コンパスの針」のような存在でありたい。分厚いファイルをイメージする「計画」よりも、たった一枚の紙(ペーパー)でも使われる「指針」という言葉を使いながら、その人の自律した運転人生を支えたいと考えたのです。

「引っかき傷」という名の道しるべ

そしてもう一つ、私の事業を象徴するのが「3Dカード」です。 これもまた、「3D」という誰もが知る言葉(3D (Three-Dimensional 3次元))を借りることで、英語三文字を覚える苦労をショートカットさせる狙いがありました。

カードの名称を聞いて「3Dカード? 立体なんですか?」 ワークショップでこう聞かれるのが、私にとっては至福の瞬間です。「いやいや、この3Dはですね……」 と説明を始める時の私は、きっと「ドヤ顔」をしているのではないか、と気を付けるようにしています。

私の仕掛けた言葉の落とし穴に、見事にはまってくれたこのやりとりが相手の方に「引っかき傷」のように心に残り、記憶に少しだけ刻まれて、何かあった時に思い出していただけるきっかけになれればいいなあ、と考えています。そんな知名度のある言葉を前面に出すこと。これもまた、効果的な方法だと考えています。

実は、この3Dカードも紆余曲折がありました。当初は「Driver’s Desire Deliver Card」としていました。Deliver(届ける・実現する)という意味を反映したものでした。 しかし、日ごろから事業に関してアドバイスをいただける方から「Discover(発見・再発見)の方が実態に近いのでは?」という指摘を受け、現在の形に進化しました。

また、Desire(欲望・希望)という言葉についても、運転の目標を見つけるためのカードなのにこの単語に「目標という意味は含まれていないのでは?」というご指摘をいただくことがあります。ごもっともなご指摘で、ゴロ合わせを優先させた無理がこんなところにも出ていることは否めません。しかし、こんな言葉の定義を巡って議論すること自体が、私にとっては楽しいプロセスなのです。文字選びの苦労、無理やりなこじつけ。それらを笑い合いながら、少しずつ「自分の言葉」にしていく。

ネーミングとは、必ずしも正解を提示することではなく、それを通じて相手とのコミュニケーションを深めるための、最高のお遊びだと感じています。

言葉選びの根底にある「相手への想像力」

振り返ってみれば、私の起業後の歩みは、かつての自分が苦しんだ「言葉の壁」をいかに低くし、いかに楽しく作り替えるかという挑戦の連続でした。

「英語三文字が大嫌いだったお前が、なぜDCPなんて名前を使っているんだ?」 かつての私を知る人が見れば、そうツッコミを入れたくなるでしょう。自分でも、この滑稽な矛盾には苦笑いするしかありません。しかし、今の私には明確な答えがあります。

それは、英語三文字という「短い記号」が持つ、圧倒的な「伝達の速さ」と「記憶への残りやすさ」を、今度は誰かを排除するためではなく、誰かを救うために使いたいと願っているからです。

かつての職場の「〇〇〇」という英語三文字言葉が、仲間内の連帯を強める武器だったように、私の「DCP」は、ドライバー本人とご家族、そして地域社会を繋ぐ共通言語でありたい。難しい「運転継続指針」という言葉を飲み込むのに1分かけるより、「DCP」という三文字を1秒で共有し、その分、1秒でも早く安全運転について語り合ってほしいのです。

大切なのは、相手の気持ちを思いやり、反応を見ながら、最も心に響く言葉を選び抜くこと。 「計画」という重たいイメージを「指針(ペーパー)」という軽やかな言葉に変更したように、相手の隣に立ち、そっと向かうべき方向性を指し示す。その「指針」が英語三文字であったとしても、思いが通じると考えています。

次はどんな言葉を選び、どんな「引っかき傷」を皆さんの心に残そうか。 この滑稽な矛盾を抱えたまま、私はこれからも「世界一優しい英語三文字」を探し続け、世の中に貢献していきたいと願っています。

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