3Dカードに関するみなさんの疑問に回答します(第3回:具体的な活用シーン編)

前回のブログでは、3Dカード(Driver’s Desire Discover Card)の背後にある心理学や行動科学の理論的な裏付けについて解説しました。3Dカードには「予期後悔」や「自己決定理論」といった裏付けがあることをご理解いただけたかと思います。

しかし、理論がわかると次に出てくるのが、「3Dカードを使うと具体的に何が起きるの?」という疑問です。 「頑固な親に本当に効くのか?」「具体的にどんなアドバイスをしたらいいのか?」といった、より実践的で生々しい活用イメージを求める方も多いと思います。

今回は、ワークショップや対話の現場でよく聞かれる「具体性を確認する質問」にお答えしてまいります。

①カードを手にしたらどのような変化が現れますか?

質問:
実際にカードを使い始めると、高齢ドライバーはどんな反応を示すのでしょうか?

回答:
最初は「検査」だと思って警戒する方も多いですが、カードを使い出すと「自分自身との対話」が始まり、驚くほど真剣にかつ没頭しながら、自分自身の考えをまとめようとする様子が見られます。

解説:
「自分自身の運転を考えるワークショップです」とご紹介すると多くの方は、最初「警察や免許センターで実施するような検査を受けるのか」と、少し警戒した表情で席に着かれます。しかし、3Dカードを広げ、「このカードの中から、あなたが大切にしたい、運転の理想像に近いものを選んでください」と伝えると、そこから少し空気感が変わります。

あるワークショップでの事例です。普段から車を使用している高齢の方で、その話しぶりから運転に相当の自信をお持ちである様子がこちらにも伝わってきました。その方がカードを手に取った瞬間、急に無口になりカードを見つめたまま微動だにしない状況になりました。ちょっと心配になってお声をお掛けすると、「真剣にカードを選びたいのだが、どちらのカードがより自分の理想に近いのか、ずっと自問自答しているんだ」 そんな話をお聞かせていただいたこともありました。

これは、従来の検査で行われる安全運転に関する事実確認(交通法規を守っていますか、どんな運転をしていますか、という知識や行動等の振り返り)とは真逆で、「どんな運転がしたいですか?」という内発的な動機を問われることへの、一種の「戸惑い」もあるのだと思います。しかし、それだけに新鮮に感じていただくことができ、興味を持って集中していただいている証拠だと考えています。また、直接言葉にするのが恥ずかしい「プライド」や「愛情」に関する内容も可視化され、免許返納の議論に必要なすべての材料が見つかると考えています。

②使用後にどのような議論をするのですか?

質問:
カード使用後に残ったカードの結果を使って、具体的にどのような議論をすればいいのでしょうか?

回答:
単に「運転を続ける/やめる」ではなく、カードの結果で判明した「運転の理想像」について詳細に確認し、「その理想を叶え続けるために、どんな作戦を取るか」を具体化します。

解説:
3Dカードの真骨頂は、選んだカードから目指したい運転の理想像がわかることです。本人も意識していない意外な結果、ということも多く、本人ですら気づかなかった想いであれば、当然ご家族も知らないはずです。その「本音」を一度、家庭内で具体化してみることをお勧めします。

そして、理想像とそれに対する現状を比較し、そこにギャップがあることを確認して、理想像の達成を効率的に目指す戦略を考えるようにアドバイスしてはいかがでしょうか。なお、この段階では、家族の側は、まず高齢ドライバーの「考えに一枚載ってみる」という気持ちが重要で、否定的な意見を言ったり、判断をしないことがポイントです。

一例として、「80歳になるまで運転を続けたい」という理想像を描き、「最近、夜の雨の日は前方の様子が見えにくくなっている」という現状がある場合。現状を聞いて「危ないから免許返納」と意見・判断するのではなく、理想像を実現する考えに載って「80歳になるまで運転を続けるために、リスクの高い『雨の夜』は運転しない」というルールを全員で決めます。これは単なる「禁止」ではなく、理想像に達するための「戦略的撤退」です。こういった具体的かつ実践的な「代償手段」を高齢ドライバー本人と家族が一緒に考えて見つけ出します。高齢ドライバーが選んだ「理想像」達成のためだから、その「ルール」を喜んで受け入れるのです。

③対話を拒否されるなど「難しいケース」にはどう対応しますか?

質問:
成功事例ばかりではないはずです。高齢ドライバーがカードの結果に全く納得していない、あるいは高齢ドライバーからの反発が強いケースにはどのように向き合えばいいのでしょうか?

回答:
「説得」を捨てて、徹底的に「聴く」ことに徹します。反発の裏にある高齢ドライバーの「本音」に光を当てることが解決の糸口になります。

解説:
確かに、高齢ドライバーの中には心を開かない方もいらっしゃると思います。「こんなカードで何がわかる!」と怒り出す方もゼロではありません。それは、カード枚数が限られるため、すべての高齢ドライバーの意向をカードに表し切れていないのかもしれません。しかし、その怒りの正体は「運転を奪われること=社会との断絶」への恐怖であることがほとんどだと考えています。

私たちは、そのような場合、カードの使用をきっかけに、どんなカードがあったらよかったのか、という話を持ち出してもらうといいのではないか、と考えています。高齢ドライバーがどんな運転の理想像を持っているのか、という話をしたことがある家族はほとんどいないと思います。しかし、カード使用をきっかけに、お互いに腹を割って話すことができるといいのではないでしょうか。例えば、高齢ドライバーの「これまでの運転歴」「運転の楽しい思い出」などを敬意を持って聴きます。30年、40年無事故で家族を支えてきたというような自負を家族に認められたとき、ようやく「今の自分」を客観視する心の余裕が生まれます。このような「難しいケース」でも3Dカードの真価が発揮できると考えています。私たちが目指すのは100戦100勝ではなく、一人ひとりが「納得感」を持って自身の運転を考えることです。

④短時間で効果を出すための「運用モデル」はありますか?

質問:
地域の安全フェアや自治体の講習会など、限られた時間の中で使用する方法は存在するのでしょうか?

回答:
カードの山からランダムに「カードを抜く」ことと、そこから「カードを選択する」という行為が遵守されていれば、自由度が高くご使用いただけます。

解説:
これまでのワークショップでは3Dカードを使用して早い人で5分ほど、平均でも10分ほどの使用で運転の理想像を発見することができます。ただし、じっくり考えさせてほしい、という人も中にはいて、そうなるともう少し時間がかかるかもしれません。いずれにしても、私たちは、以下のステップを標準モデルとしています。

  1. カードの山から、ランダムにカードを抜く
  2. その中からカードを選ぶ

一人で使用する場合は、カードの山から抜くカードの枚数を増やし、そこからカードを1枚選ぶというやり方を取ることにより、カードを抜く回数を減らすことができ、時間の短縮化が図られると考えています。しかし、その分多くのカードの中から究極の1枚を選ぶ必要があり、迷いから余計に時間がかかってしまう、ということも心配されます。

なお、この短時間での使用方法でも、「人から言われる」のではなく「自分が理想の運転像に近いカードを選ぶ」というプロセスを経るだけで、その後の交通安全講習の受講態度が劇的に変わると考えています。運転を「自分事」としてスイッチが入る瞬間を生み出しているのが、3Dカードの強みです。

リアリティが未来を変える

今回のブログでは、3Dカードが現場でどのように機能し、どのような効果を生んでいるのか、具体的な側面からお伝えしました。

抽象的な「安全」という言葉を、その人の人生感に合わせた「具体的な行動」へと結びつけること。それが3Dカードの役割です。「うちの親には運転は無理」と決めつける前に、ぜひ一度、3Dカードが起こす「変化」を体験してみて欲しいと思います。

次回、第4回では、3Dカードを別の角度から検証してみたいと思います。

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