これだ「モチベーション3.0」! 高齢ドライバーの「内なる声」が問題を解決する確証を発見

免許返納の問題を解決する、高齢ドライバーの運転継続計画(DCP)を作成する上で最も重要なのは、当事者である高齢ドライバーの「内なる声」に耳を傾け、彼らの主体性を尊重することです。しかし、現状の免許返納促進策は、返納による各種割引等が受けられるなどのメリット(外発的動機)ばかりを強調しがちで、問題の本質的な解決には至っていません。

この状態を客観的に説明し、ご理解いただけるような、何か有効なアプローチはないか?

そう考え、様々な文献を読み漁る中で出会ったのが、ダニエル・ピンク氏の著書『モチベーション3.0  持続する「やる気!」をいかに引き出すか』でした。この本に触れ、従来の「アメとムチ」による動機づけ(モチベーション2.0)から、内発的動機づけ(モチベーション3.0)へと時代が変化していることを確信しました。

モチベーション3.0とは?

では、モチベーション3.0とは具体的にどのような考え方なのでしょうか?

ダニエル・ピンク氏は、モチベーションを以下の3つの段階に分けて解説しています。

  • モチベーション1.0:生存欲求に基づく動機づけ
  • モチベーション2.0:アメとムチによる外発的動機づけ
  • モチベーション3.0:内発的動機づけ

そして、モチベーション3.0は、以下の3つの要素に基づいています。

  • 自律性(Autonomy):自分の行動を自分で決めたいという欲求
  • 熟達(Mastery):自分の能力を高めたい、上達したいという欲求
  • 目的(Purpose):自分の行動が社会や人の役に立ちたいという欲求

本の中ではこんな事例が紹介されていました。

かつて、百科事典といえば、専門家が執筆し、出版社が多額の費用をかけて制作するものでした。マイクロソフトが巨額の資金を投じ、プロの編集者を集めて制作した「エンカルタ」は、まさにその象徴でした(モチベーション2.0的なアプローチ)。一方、「ウィキペディア」は、世界中のボランティアが、無償で記事を執筆・編集するオンライン百科事典でした(モチベーション3.0的なアプローチ)。

当初、誰もがエンカルタの圧勝を予想しました。「素人が集まって作った百科事典が、プロの専門家集団に勝てるはずがない」と。しかし、結果は予想を大きく裏切るものでした。ウィキペディアは、エンカルタを圧倒し、百科事典のあり方を根本から変えたのです。

ウィキペディアの成功は、モチベーション3.0の3つの要素、すなわち自律性、熟達、目的が、いかに人間の潜在能力を引き出すかを証明しています。モチベーション3.0を活用することで、人はより創造的に、意欲的に、そして持続的に活動することができるのです。

モチベーション3.0の注意点

モチベーション3.0は非常に有効な考え方ですが、注意すべき点もあります。

全ての人に当てはまるわけではない:外発的動機づけが有効な場合もある

  • 理由:
    • 特に単純作業や短期的な目標達成には、外発的動機づけが有効な場合があります。
    • 個人の価値観や状況によって、内発的動機づけよりも外発的動機づけを重視する人もいます。
  • ポイント:
    • 個々の状況や目標に合わせて、内発的動機づけと外発的動機づけを適切に組み合わせることが重要です。
    • 例えば、基本給を確保しつつ、成果に応じてインセンティブを与えるなど、バランスの取れたアプローチが効果的な場合があります。

環境整備が重要:自律性、熟達、目的を尊重する環境が必要

  • 理由:
    • モチベーション3.0は、個人の内発的な欲求に基づいていますが、それを満たすためには適切な環境が不可欠です。
    • 上司の過度な管理や、目標達成を急かすような環境は、自律性を阻害し、内発的動機を低下させる可能性があります。
  • ポイント:
    • 従業員に裁量を与え、意見を尊重する文化を醸成することが重要です。
    • 研修や教育を通じて、スキルアップや自己成長を支援する機会を提供することも効果的です。
    • 組織の目標と個人の価値観を結び付け、仕事の意義や目的を明確にすることも重要な要素です。

成果が出るまで時間がかかる:長期的な視点で取り組む必要

  • 理由:
    • 内発的動機づけは、外発的動機づけと比べて、成果が出るまでに時間がかかる傾向があります。
    • 目に見える成果が出にくい初期段階で、モチベーションを維持することが重要になります。
  • ポイント:
    • 短期的な成果にとらわれず、長期的な視点で目標を設定し、粘り強く取り組むことが重要です。
    • 小さな成功体験を積み重ね、達成感を味わうことで、モチベーションを維持することができます。
    • 組織として従業員の長期的なキャリアプランを支援する事も重要になります。

最後に

高齢ドライバーの「内なる声」を尊重し、主体的な運転継続を支援するDCPのアプローチは、モチベーション3.0の考え方と深く共鳴しています。

私自身、サラリーマン時代に事業第一線の仕事のやり方が、会社の指示に従うことを強要し、それに異を唱える人がいないことに疑問を感じ、独立を決意しました。会社は社員が良かれと思ってその場で臨機応変に判断することを奨励し、もしそれが結果的に間違いだったとしても、社員を守ってくれる存在である、と信じていたのですが、実際はマニュアル通りに動き、記載がない行動を勝手に実施することを禁じる、社員の主体性を尊重しない文化でした。

「答えがない今の時代に、すべてがマニュアル化できるのか? 社員は何のためにいるのか?判断しない人間はプログラム通り動く機械と同じではないか?」

そう感じた私は、自分が事業をするなら、メンバー一人ひとりの「内なる声」に耳を傾ける仕事・組織を作りたいと考えました。そして、その考えを裏付ける理論を探し、出会ったのが、モチベーション3.0だったのです。

私の事業では、高齢ドライバーの主体性を最大限に尊重し、彼らが理想とする年齢まで安全に運転を続けられる、だけどそれが無理になったら潔く運転を卒業する、そのような支援をしていきたいと考えています。そして、事業が拡大したとしても、メンバー一人ひとりの主体性を尊重する組織であり続けたい。それが、私の信念であり、これからの時代の働き方だと信じています。

類似投稿