「影響の輪」に集中し、運転寿命を延ばす、という発想の転換に欠かせない「我が事化」

世界中で読まれている大ベストセラービジネス書の一つに「7つの習慣」(スティーブン・R・コヴィー著)があります。その中で第一の習慣「主体性を発揮する」では「影響の輪」と「関心の輪」という考え方が紹介されています。この視点から、運転寿命の延伸するにはどうしたらいいのか、ということについて考えてみたいと思います。
「7つの習慣」が示す「影響の輪」とは、私たちの言動や選択によって直接的に影響を与えられる範囲のことです。一方「関心の輪」とは、私たちが関心を持っていること全体のことで、景気や世界情勢、他人の行動など、自分ではなかなかコントロールできない領域を指します。本の中では、自分の影響がおよぶ範囲「影響の輪」に焦点を当てて行動することが、主体性を発揮し、人生をより良く生きるための鍵である、と述べています。
最近、日本の米の問題についてテレビなどで盛んに報道され「政府が悪い」「政策が間違っている」といった批判を耳にします。もしかしたらそれらは「関心の輪」からの発言と言えるかもしれません。もちろん、問題提起は重要ですが、私が日頃から「影響の輪」で考えたいと努めている側からすると「では、自分なら何をするの?」と聞きたくなります。
余談ですが、政府が減反政策を進めた背景には、日本人の食生活のパン食化が進み、米の消費が減少している、という事実を小学校の授業で習った記憶があります。私たち日本人が米を食べなくなったから減反政策(生産調整)が必要になった。だから、必ずしも政府だけが悪いのではなく、私たち国民にも問題の原因がある。この視点に立てば、単に減反政策を非難するだけでなく、「私たち自身の食生活を考える」という「影響の輪」に焦点を当てることで、問題解決の選択肢が広がってくるはずです。
このように、問題を他人事として捉えて批判や不満を述べるだけでは何も変わりません。大切なのは問題を「我が事」として捉え、自分自身が影響を与えられる範囲で行動すること、つまり「影響の輪」に意識を向けることだと考えています。
高齢ドライバー問題は「明日は我が身」
高齢ドライバーによる事故のニュースに触れる度に「自分には関係がない」「高齢ドライバーは免許返納を」との発言がSNS等でも多く聞かれます。そして、それらの発言には、どこか他人事のように考えている感じがします。もしかしたら、SNSで免許返納を求める声は「関心の輪」からの意見になっているのかもしれません。
もちろん、免許返納することで事故が減り、安全が確保されることは事実です。しかし、私たち一人ひとりが「数年後、自分が同じ状況に置かれるかもしれない」と考え、これを「我が事」として捉えるならば、単に免許返納をする、という解決策だけでなく、もっと幅広い対策を求める可能性があるのではないでしょうか。誰もがいつかは高齢者となり、運転という行為と向き合う可能性があるのですから。
主体的な問題解決へのプロセス
現状の高齢ドライバーの問題を「影響の輪」から考えた瞬間、いろいろな発想が出てくると思います。例えば、地域の公共交通機関の利用を試してみる、運転免許証の自主返納の相談窓口を訪れて情報を集めてみる、運転技能講習や高齢者講習について調べ準備する、運転シミュレーターを活用して自分の運転の癖や苦手な部分を客観的に把握する、運転スキルを客観的に評価してもらって個々の状況に応じたアドバイスやサポートを受ける、最新の安全運転サポート機能を備えた車への乗り換えを検討する、などです。
「関心の輪」に目を向けたときに他人に問題を転嫁したり、環境のせいにしたりする「後ろ向き」「否定的」な感情や行動。そして、「影響の輪」に目を向けたときの「自分自身がどうありたいのか」を明確にし、それを実現するための方法を考え、実行に移すような「前向き」「肯定的」な気持ちや行動。これらからは180度違った結論が導かれ、どちらの考え方を持った方が生きていく上での充実感、満足感という意味でも望ましいかは明らかだと思います。
つまり、「影響の輪」の発想に立てば、将来的には免許返納を選ぶことになるとしても、大半の方は安全を保ちながら、自分自身の運転寿命を延伸するための努力をする、という発想をするのではないか、と考えています。
運転寿命の延伸 私たちにできること
高齢ドライバーの事故問題は、決して他人事ではありません。私たち一人ひとりが「7つの習慣」で提唱される「影響の輪」と「関心の輪」という考え方を理解し、問題を「我が事」として捉えて主体的に行動することが重要です。
物事の考え方を「影響の輪」に集中すると、従来の免許返納中心の選択肢から、別の選択肢が見えてきます。批判を恐れずに自由に考えることでいろいろなアイデアが生まれてきます。口で言うほど簡単なことではないかもしれませんが、主体的に行動することが問題を解決し、より良い未来を切り開いてくれると思います。
「7つの習慣」は、主体的な生き方を送るためのヒントを与えてくれる良書です。もし興味があれば、ぜひ手に取って読んでみてください。いろいろな心配ごとや悩みなどがあるときこそ、自分自身の「影響の輪」に意識を集中し、主体的な行動を心がけたいものです。