え?道に迷ったときと高齢ドライバー問題は同じ?!「納得感」を重視する選択の考え方とは

高齢ドライバーにとって、運転免許証は単なる許可証以上の意味を持つのではないでしょうか。多くの方が、社会に出る頃に手にした免許証は、時に50年以上の付き合いになります。もしかしたら、配偶者や家族よりも長い時間を共にしてきた、かけがえのない存在かもしれません。
そんな長年の友との別れは、突然であればあるほど辛いものです。いつか訪れる別れの時を心では理解していても、せめて納得感を持ってその時を迎えたい。これは、高齢ドライバーに限らず、働き盛りの世代にも、免許を取りたての若者にも共通する願いではないでしょうか。
人生は選択の連続:迷った時の決断
人生は選択の連続と言われます。運転中、道に迷い、右に行くか左に行くか迷う。カーナビが普及した現代でも、思わぬ状況で判断を迫られることがあります。特に、不慣れな土地や複雑な交差点では、カーナビの指示だけでは迷ってしまうこともあるでしょう。
そんな時、最善の策は一度立ち止まり、地図を確認し、周囲の状況を把握することです。しかし、車を止めてこれらの行為をすることは、自分勝手で周囲の迷惑になり、時には事故等の危険が伴います。
そこで多くのドライバーが取る行動は、「とりあえず、こっちに行ってみるか」という決断です。間違っているかもしれない。それでも、立ち止まって周囲に迷惑をかけるよりは、まずは行動してみる。そして、もし間違っていれば、Uターンしたり、別のルートを考えたりすれば良いのです。
この時、もし第三者の指示に従ったのに間違った道に進んでしまったら、トラブルになりかねません。しかし、ドライバー自身が決めたことなら、たとえ間違っていても納得感が得られ、トラブルも少ないのではないでしょうか。
この考え方を高齢ドライバーの免許返納問題に当てはめてみましょう。免許返納を家族から勧められている高齢ドライバーは、まさに人生の岐路に立たされていると言えます。
ここで大切なのは、第三者の意見に流されるのではなく、自分の意思で決めることです。もし、返納せずに運転を続ける道を選び、その結果、運転に不安を感じたり、事故を起こしそうになったりした時は、その時点で返納を考えれば良いのです。
運転継続計画(DCP):納得感を生む新たな選択肢
ここで注目したいのが、運転継続計画(DCP)という考え方です。これは、まずは、高齢ドライバーが自分の意思で運転を続ける道を選んでみる。そして、もしその先に困難があれば、いつでも返納できるという選択肢を残しておく、というものです。
これまでは、免許を返納するか、運転を続けるか、という分岐点での一択しかなく、そこで高齢ドライバーが「究極の選択」を迫られる、ということになりがちです。しかし以前、ブログの中でご紹介した「パラコンシステント(矛盾許容論理)」という発想に立てば、答えは0か1だけではない、という考え方も可能だと思います。
DCPでは、とりあえず運転を継続する、という選択肢を選んでみる、そしてその後の状況とみて、高齢ドライバーと家族がそのまま進むか、Uターンするかを考える。それにより、高齢ドライバーの納得感と、家族の安心感を両立させる、と考えています。
矛盾を抱える社会で:知恵を絞り、新たな道を探る
最近、高齢ドライバーによる痛ましい事故が相次いでいます。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、怪我をされた方々の一日も早い回復を願います。
悲しい事故をなくすためには、社会から車をなくすことが最も確実な方法かもしれません。しかし、それは現実的な解決策ではありません。物流が止まり、私たちの生活は成り立たなくなってしまいます。
私たちは、車社会でさまざまな矛盾を抱えながら生きています。だからこそ、知恵を絞り、相反する考え方を両立させる道を探る必要があるのではないでしょうか。
DCPは、その試みの一つです。まだ課題はありますが、多くの人々の英知を結集することで、より良い解決策が見つかると信じています。
かつて、ウィキペディアがエンカルタを凌駕したように、人類は知恵と協力で多くの問題を解決してきました。高齢ドライバーの問題も、私たち一人ひとりが考え、行動することで、必ずより良い未来を切り開けると信じています。