高齢ドライバー問題の対策への近道? これまでの検証と今後の展望に関する考察 

「仮説は否定されるために存在する」
この言葉を以前のブログでも紹介しましたが、その真意を身をもって体験することになりました。高齢ドライバーの運転に関する問題は、当事者である高齢ドライバーやその家族への直接的なB2Cアプローチ(企業と消費者間の取引)が有効である、との仮説を立て、運転継続計画に関するセミナーを開催いたしました。しかし、厳しい審判をいただくことになりました。

この結果から、高齢ドライバーの問題に対するB2Cアプローチは、現段階においては市場ニーズと合致しないのではないか、との判断をせざるを得ませんでした。それは家庭内の問題に対する第三者の介入にそれほどメリットがないことや依頼する側の抵抗感、高齢者を対象とした犯罪の増加による警戒心なども、その要因として考えられます。

B2B、B2B2Cへの転換と、社会全体への貢献

しかし、今回の検証を通じて、新たな視点を得ることができました。そもそもこの問題は、解決することにより、プライスレスのメリットがあるのは運転が続けられる高齢ドライバー自身、だからB2Cモデルが有効だろう、と考えていました。しかし、家庭内の問題に干渉して欲しくない、などの現状があることを踏まえ、この問題を解決することのメリットを改めて考えてみました。

そうすると、実はこの問題の解決が、家庭内という「部分最適」なものではなく、社会全体にとって有益な「全体最適」につながること、そして、それらのステークホルダーと連携を強化すること、つまり、B2B(企業間取引)またはB2B2C(企業間と消費者間の取引)モデルによるアプローチが有効であることが見えてきました。

具体的には、以下のステークホルダーとの連携が考えられます。

  • 自治体・警察署:
    • 運転を続ける、免許を返納する、といった判断がより適切に実施され、安全意識の高まりにより、交通事故の減少と自治体の安全対策コスト削減が期待されます。
    • 高齢ドライバーの運転能力維持は、認知症になるリスクを下げ、医療費抑制や地域経済の活性化、高齢者同士のコミュニケーション促進等に貢献します。
  • 自動車業界・保険業界:
    • 高齢ドライバー向けの自動車販売や各種自動車整備等のサービス利用継続により、若者の自動車離れにより危惧される、自動車関連市場の縮小を防ぎます。
    • 高齢ドライバーの運転継続は、契約不継続による自動車保険市場の縮小を防ぐことに貢献します。
  • 人材不足に悩む企業:
    • 高齢ドライバーの運転技能を活かした雇用機会の創出は、少子化に伴う労働力不足の解消に貢献します。

高齢ドライバーの運転継続・免許返納に関する問題は、単に個人の問題として局所的に捉え、対策を考えるのではなく、社会全体で取り組むべき大きな課題で、社会全体にメリットがあります。そのためにも、高齢ドライバーが安全に運転を継続できる、あるいはスムーズに免許を返納できる「社会の仕組み」を構築することは、私たちの使命であり、多大なメリットを受ける各ステークホルダーとの連携がとても重要だと感じます。

今後の展望:連携による問題解決への道

私たちは、高齢ドライバーに何らかのリスクがあっても、何が何でも運転を続けるべき、とは考えていません。運転に適さない、または、運転を続けるために必要とされることができない、というなら、潔く免許を返納するべきだと思います。

その判断を海外では医師が実施しているところもありますが、日本の地域によっては医師の数が足りず、負担が大きくなるために、現実的ではない、との判断もあります。
運転は自己責任で考えるべきものですが、それを本人任せにするのではなく、社会全体で高齢ドライバーの問題を考え、対策を実施すること。そのために今後はB2B、B2B2Cによるアプローチを積極的に推進したいと考えています。

高齢ドライバーの問題を解決するのは、個人ではなく自治体や企業の役割なのではないか、とのアドバイスを何人かから受けたことがあります。その方が効率的かもしれませんが、そのきっかけを作ることができるのは私たち、と考えています。今後はステークホルダーの方々との連携を密にし、最新技術、データを活用しながら、常に新たな視点、発想を取り入れて、高齢ドライバーが安全に、安心して、そして生きがいを持って生活できる社会の実現を目指します。

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