高齢ドライバーによる事故多発!大義名分をつけた”民事介入”で現在の硬直状態を打開しよう!

高齢ドライバー事故防止に向けた現状と課題
高齢ドライバーによる不幸な交通事故を少しでも減らすため、関係する各事業者、例えば地元の自治体や警察をはじめとするみなさん、が日ごろから様々な対応をとってくださっています。具体的には、免許返納時の魅力ある特典を用意したり、困ったときの相談窓口である「#8080」の設置、交通安全教室の開催、そして高齢ドライバー向けの講習会の実施など、多岐にわたる取り組みが実施されています。
しかしながら、実態としては高齢ドライバーによる事故件数が減っている状況にはなく、公表されているデータ等を見ると、むしろエリアによっては事故件数が増えている状況も散見されます。
各事業者のみなさんが少しでも事故を減らそうと懸命に対応してくれているにもかかわらず、なかなか効果が出ないというのは、頑張っている各事業者のみなさんからするとモチベーションが下がる原因にもなりかねません。また、高齢ドライバー側からしても、各事業者の事故防止の対応に期待しているにもかかわらず、なかなか効果的な施策が打ち出されない現状に、もどかしさを感じているのではないでしょうか。
免許返納だけではない、自己責任と新たな視点
高齢ドライバーによる事故の防止、そしてそれを解消するための免許返納等の対応等は、基本的に自己責任の範疇であり、各事業者から言われたから実施する、という性質のものではないと考えられます。また、法律等で特定の年齢に達したら自動的に運転できなくするというのも、運転の能力には個人差がある、という実態を踏まえない、やや強引なやり方であり、かえって別の問題を生み出す危険性があるように感じます。
各事業者の立場では、「民事不介入」という原則があり、なかなか踏み込めない領域だということは理解できます。しかし、そこに何か明確な「大義名分」があれば、それも不可能ではないという気もします。
現状では、高齢ドライバー問題を解消する手段として「免許返納を促す」という対応が主流です。この対策があるから、高齢ドライバーによる事故が一定数内に抑えられているという見方もできます。しかし、高齢ドライバーの事故が減らず、免許返納件数が頭打ち、むしろ減少しているという状況を踏まえると、新たな対策が求められていると感じます。例えば、免許返納して事故を防ぐというやり方がやや事態を硬直化させているのであれば、発想を転換して、免許を返納しなくても事故を防ぐ、という発想で新たな施策を考える、というのはいかがでしょうか。この考え方をベースに、各事業者が「民事介入」と言われないような「大義名分」があれば、この施策を推進することも不可能ではないと考えられます。
多角的な視点と「マインド」強化の重要性
各事業者の立場、特に高齢ドライバーの住む地元自治体としては、高齢ドライバーの事故が多発している問題だけで頭を抱えているわけではないと思います。例えば、生産年齢人口が不足している、社会的孤立高齢者を増やしたくない、高齢者医療費を増やしたくない、自動車市場を縮小させたくない、といった様々な問題にも直面し、悩みの種になっていると思います。そうであれば、これらの問題も含め「十把一絡げ(じゅっぱひとからげ)※」で「一網打尽」に解消する、という発想でアプローチし、高齢ドライバーの事故多発の問題を解消しながら、ついでに別の問題も解消してしまう、という一挙両得な発想ができれば、これに勝るものはないという気がします。
そこで、現状の高齢ドライバーへの現行の対策の問題点を一度確認してみたいと思います。高齢ドライバーが安全に運転を継続するための条件として、「技術」「ハード」「情報」、そして「マインド」の4つの要素が必要と考えています。この4つの要素に現行実施している対策を整理・分類した場合、重要な事実が明らかになります。それは、「マインド」に関する対策がほとんど実施されていない、という現実です。
「技術」面では警察や自動車学校等が安全運転に必要な指導等を行ってくれています。「ハード」面では自動車メーカーを中心に安全運転に資する様々な車のシステム等が提供されています。「情報」面では自治体や警察、損害保険会社等が事故やその防止に関する注意喚起をしてくれています。しかし、「マインド」面、つまり高齢ドライバーが「絶対に事故を起こさない」という強い決意や考えを持たせる、という部分には、対策の弱さがあると感じます。
確かに「マインド」面の対策として各種情報を提供しているではないか、という意見もあると思います。しかし、情報を提供し、それが高齢ドライバーの耳には入っているとしても、それが心に深く落ちていない、右から左に抜けてしまっているように感じます。それは、様々な情報を提供し、それを高齢ドライバーが情報として知っていたとしても、「我が事化(わがことか)」する、という要素が弱く、それが致命傷になっているため、と考えられます。
※十把一絡げ(じゅっぱひとからげ):様々な種類のものを区別することなく、ひとまとめにして扱うこと
「運転継続計画(DCP)」による意識改革と新たな判断軸
この原因は様々考えられますが、そこまで実施すると時間的な制約が発生してしまう、コスト的に見合わない、などの要因があるのだと思います。しかし、今高齢ドライバーの問題が解消できず、効果が現れない根本的な原因は、この「マインド」面へのアプローチの弱さにあると言えます。
この対応のために莫大な費用がかかる、となれば、二の足を踏む気持ちも理解できます。しかし、お金はそれほどかからない、やり方次第でなんとかなる、ということであれば、検討の余地はあるのではないでしょうか。
私たちは、このマインド面の強化を図るための具体的な手段として、「運転継続計画(DCP)」の導入を強く推奨しています。高齢ドライバーは年齢が高くなるほど、自分の運転に自信を持つという傾向があるそうです。そして、自信があるということは、自分自身の理想像のようなものを持ち、それを追求しようとする気持ちも高いと言えます。その高齢ドライバーの特性を活かし、運転に関する具体的な目標を考え、その目標達成のために必要となることを洗い出して行動計画としてまとめ、それを実際に実行していくというのが運転継続計画の流れです。
特に「計画の内容を実行する」という部分は長期にわたる対応となり、その負担が心配になりますが、高齢ドライバーの家族等を巻き込んでサポートを受けることで、ある程度克服が可能と考えています。また、現在の免許返納は、明確な判断軸がなく、どうしても当事者同士の水掛け論になりがちです。ですが、この計画を作ることができるか、そして計画を作ってしっかりと実行できているか、という明確な判断軸を用いることができれば、免許を返納するかしないか、という議論を、より建設的に進めることができ、これが新たな判断軸になるという効果も期待できると考えています。
まとめ
これまで、関係する各事業者のみなさんが様々な対策を講じることで、高齢ドライバーの事故発生を防ごうと努力してくださっています。そのおかげで、事故は一定数抑制されていると考えられます。しかし、より高いステージを目指すのであれば、これまでの対策だけでは十分とは言えないと感じています。
そのための切り札として、私たちは運転継続計画(DCP)の作成を提案しています。これにより、高齢ドライバーによる事故を他人事ではなく「我が事」として捉え、自身の理想とする安全な運転を名実ともに実現することができます。そして、当事者自ら事故防止に努める、という新しいアプローチを提案することができます。
少しでも高齢ドライバーによる不幸な事故をなくし、高齢者の皆さまがこれからも元気に活躍できる社会の達成を目指して、今後も活動してまいりますので、何卒ご理解とご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。