浜松市小学生死傷事故 高齢ドライバー問題と私たちに突きつけられた課題

写真出典:Yahoo!Japanニュース
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3月24日夕方、浜松市中央区で痛ましい事故が発生しました。小学生の自転車の列に高齢ドライバーが運転する軽トラックが突っ込み、小学2年生の女児の尊い命が奪われました。被害に遭われたご本人やご家族に心よりご冥福をお祈り申し上げるとともに、重体となっている女児、そして怪我をされた女児たちの一日も早い回復を願っております。
事故の概要:高齢ドライバー「記憶がない」
事故は、浜松市動物園の入り口交差点付近で発生しました。78歳の男性が運転する軽トラックが、路側帯にいた小学生の列に後方から衝突。この事故で、小学2年生の女児が亡くなり、小学4年生の女児が意識不明の重体、別の2人の女児が軽い怪我を負いました。
逮捕された加害者の男性は、「なぜぶつかったか分からない」「事故当時の記憶がない」と供述しています。警察は、過失運転致死容疑で捜査を進めていますが、過去の高齢者講習では問題がなかったことも分かっています。
高齢ドライバーの今回の事故を考える
今回の事故で、私が最も深く考えさせられたのは、加害者の「記憶がない」という言葉です。捜査中であるため、憶測の域を出ませんが、加害者が入院等せずに、警察で取り調べを受けているのだとすると、健康状態に深刻な問題がある、という感じではない、または一時的に何らかの症状が発症したが、今は大丈夫、ということなのでしょうか。
素人考えだと、加害者の高齢化に伴う脳の機能変化、あるいは運転中の突発的な意識消失などが原因なのか、と思ってしまいますが、状況から見て、もしかしたらスマホの操作等で一瞬、前方確認を怠ったために発生した、というような年齢に関係がない要因によるもの、という可能性があることも示唆しているのかな、と思います。
高齢ドライバーによる事故が発生すると、議論になるのが免許返納の問題です。免許返納は、この問題の一つの解決策であり、今回のような事故が起きた直後は免許返納の件数が増える、というのも事実のようです。しかし、時間が経つと事故情報の風化が始まり、また事故が起きる、ということが繰り返されているようにも感じます。
事実、ある自治体では、高齢ドライバーによる事故防止対策のための予算が来年度から削られるという話も耳にしました。「抜本的な対策は何も取られていないのでは?」との私たちの指摘に担当者の方も「わかっています」と個人的にはご理解いただいていますが、高齢ドライバー問題は社会全体で真剣に向き合うべき課題であるにもかかわらず、その認識が十分に共有されていないと感じます。
また、高齢ドライバー問題は、結構「てんつば」(「天に唾する」の略。人に害を与えようとした結果、かえって自分自身に害がふりかかることを意味する慣用句。汚い言葉ですいません。)なところがあり、そこも慎重に考える必要があると思います。
例えば、今回の加害者は農家の方だったみたいですが、農家の方は比較的高齢の方が多いと想定され、彼らの多くが免許返納したら、日本が直面している「コメ問題」が益々深刻になってしまうのではないでしょうか。ちょっと極論ではありますが、生産年齢人口が減ってしまうことで、真綿で締めるようにじわじわその社会影響が出てしまうのではないか、と考えてしまいます。
また、私たち働き盛りの世代は、この類の事故があると条件反射的に「高齢ドライバーは免許返納を!」と主張しがちですが、恐らく現在高齢ドライバーの方たちは、自身が働き盛りのときに、同じことを主張していた側にいたと思います。しかし、実際に自身が高齢ドライバーになったときに、なかなか決断がつかない。きっと私たち働き盛りが、何年か後に高齢ドライバーになったときに、スパッと免許返納できるか、と問われて口ごもってしまうように。
だから、免許返納の問題は、難しいのだと思います。高齢ドライバー問題は、他人事ではありません。私たちは皆、年を重ねます。今、高齢ドライバーに免許返納を求める声も、数十年後には自分自身に向けられる可能性があることを忘れてはなりません。
高齢ドライバー問題を一緒に考えよう
今回の事故は、改めて私たちに高齢ドライバー問題を考える試練を与えたと思います。高齢ドライバーが安全に運転を続けられる社会、そして、高齢ドライバーが適切に免許返納をする仕組み、そして誰もが安心して暮らせる社会を実現するために、私たちが何をしなければならないか、などを考える必要がありそうです。
これらの問題を解決するのに、私たちが提唱する「運転継続計画(DCP)」の作成が有効なのでは?と考えていますが、それが本当なのか、という観点から再度検証を図り、実行が伴う解決策をこれからも考え、提示していきたいと思います。
今回のブログが、高齢ドライバー問題について考えるきっかけとなり、より安全な交通社会の実現に少しでも貢献できれば幸いです。