【現場確認】板橋区・小5男児死亡事故から考える 事故原因究明と再発防止策検討を官民一体で!

その日は、いつも通りの穏やかな夕暮れになるはずでした。しかし、それを打ち破ったのは、学校から帰宅した次男の第一声でした。「近所で自動車による死亡事故が起きたみたいだよ」。
その言葉に耳を疑いました。聞くと事故現場は私の住む町内であり、私自身も日常的に利用する道だったからです。まだ10歳、未来ある小学5年生の命が、下校途中に奪われてしまった。このあまりに重く悲しい事実に、胸が締め付けられる思いです。
まず、お亡くなりになった小学生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。しかし、ただ悲しんでいるだけでは、再び同じ悲劇を繰り返してしまいます。なぜ、この場所で、このような事故が起きてしまったのか。一住民として、そして交通安全を願う一人として、原因の究明と、形だけではない真の対策の必要性を強く感じます。
2025年12月16日、板橋区志村で何が起きたのか
報道によれば、事故が発生したのは2025年12月16日の午後3時30分すぎ。東京都板橋区志村1丁目の信号機のないT字路近くの横断歩道でした。
被害に遭ったのは、下校途中だった小学5年生(10)。一人で横断歩道を渡っていたところを、60代の男性が運転するトラックにひかれ、車体の下敷きになったとされています。搬送先の病院で死亡が確認されるという、最悪の結果となりました。
警視庁は、運転していた運送業の男性を過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕しました。男性は当時、小学校の教材を運ぶために付近の倉庫へ向かっていたといいます。取り調べに対し、男性は「進路の遠方を見ていて小学生には気が付かなかった」と供述しています。
現場は近くに小学校がある場所でした。この付近は国道17号(中山道)の交差点から見次公園方面へ向かう道路となっており、直線で見通しが良い反面、車両がスピードを出しやすい構造になっています。近隣住民からは「道が狭い割に交通量が多い」「バスを追い越す車がいて危ない」といった声が以前から上がっていました。
素人プロファイリングと現場で見えた違和感
事故の具体的な発生メカニズムを知るため、私は実際に現場へ足を運んでみました。現場はバス通りに面した見通しの良い直線道路にあるT字路です。この道は国道17号に向かって渋滞が頻発する場所でもあります。
当初、私は報道写真から一つの仮説を立てました。「国道17号に向かう側の車線が渋滞しており、そこに停車していたバスなどの影から男児が横断を開始。反対車線の国道17号から直進してきたトラックが、渋滞していない車線を走行し、渋滞している車の影から現れた小学生に気づかずにひいてしまったのではないか」というプロファイル(事故や事故の傾向、原因、結果に関する詳細な情報の集約)です。ネット上でも、速度抑制のための「ハンプ(段差)」や信号機の設置を求める声が多く、多くの人が「直進車の速度」や「見落とし」に焦点を当てていましたので、これが真実ではないか、と考えました。
運転手の「遠方を見ていた」という供述は、前方にある信号や車を気にするあまり、それよりも手前にいる歩行者への意識が逸れていた、と考えました。対向車線が渋滞していて、そこに信号機のない横断歩道があれば、いつ歩行者が飛び出してくるか分からないため、徐行して運転することが求められると思います。今回の場合、現地のの「見通しの良さ」が、かえって運転手の警戒心を解き、近くの小さな歩行者を見えなくさせていたのではないか、と考えました。
警察への取材と「情報開示」の壁
今回の事故に関心があり、その続報を待ちましたが、時間が経つにつれて情報が少なくなり、焦りました。しかし、対策を考える上で「何が原因だったのか」を知ることは不可欠です。私は勇気を出して、近くの交番に足を運びました。
対応してくれた警察官の方は、事故の詳細はご存じない、とのことでしたが、そこで得られたのは意外なキーワードは「巻き込み」でした。私の当初の予測は直進中ののトラックと小学生が衝突した、と考えていたのですが、事実はトラックが事故があったT字路を左折する際に、左側にいた小学生を巻き込んだのか?という可能性が出てきました。
さらに詳細を確認するため所轄の警察署にも電話を入れましたが、「捜査上の詳細は報道以上のことは言えない」との回答でした。もし、左折時の巻き込みが主因であれば、必要な対策は「ハンプの設置」ではなくなるはずです。
ここで私が危惧するのは、事故原因と対策のミスマッチです。多額の予算をかけてハンプ等を設置しても、それが事故の真因にアプローチしていなければ、また別の場所で同じことが起きます。警察と自治体には、捜査で得た情報を民間等にも広く開示し、効果的な再発防止策を取ることを切に望みます。
地域社会で命を守るために
事故の翌日、地元町内会の方とお会いした際も、開口一番はこの話題でした。亡くなった方を知っているかどうかにかかわらず、近隣で幼い命が失われたという事実は、地域住民の心に深いダメージを与えます。
同時に、次男が事故の情報をいち早く掴んでいたことにも驚きました。いまの子供たちはSNSや友人ネットワークを通じて、我々が思う以上に素早く、かつ生々しく地域の危険を察知しています。彼らの情報リテラシーに感心すると同時に、大人がそれに見合う安全な環境を提供できていない現実に、申し訳なさを感じずにはいられません。
交通事故を減らすには、巨額の予算をかけたインフラ整備も必要ですが、それには時間がかかります。私たちが今すぐできることは、事故の「真の原因」を直視し、それを共有することです。例えば、ドライバーが「どこで、なぜ」見落としたのか。そのヒアリング結果がデータとして公開されれば、ソフト面での対策(安全運転教育や、車両側の安全装備の活用)を迅速に進めることができます。
「二度と悲劇を繰り返さない」という決意を、単なるスローガンで終わらせてはいけません。警察、自治体、そして私たち住民。それぞれが役割を果たし、事実やデータに基づいた抜本的な対策を講じること。それが、亡くなった小学生への、せめてもの弔いになると信じています。
